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元三越伊勢丹社長・大西洋×ほぼ日CFO篠田真貴子「本当に男女がフラットになるためには」

働き方改革が話題になる中で、“女性の活躍推進”や“ダイバーシティ”も注目されている。しかし、それを実現するには、異性の悩みを理解し、対応していくことが必要不可欠だ。さらに、働き方が変わる中で組織や部下へのマネジメントの形も変化するだろう。

ifs未来研究所では、8月21日、株式会社ほぼ日のCFOである篠田真貴子さんと、三越伊勢丹の代表取締役社長を務めた大西洋さんをゲストに、研究所所長の川島蓉子さんと三者で「女性の明るい未来、男性の明るい未来とは」をテーマに語り合った。リーダーたちの言葉は、きっと男女の働き方や未来にヒントを与えるはず。その一部を紹介しよう

■「女性の出産」に対して、企業がどんな態勢を取れるかがポイント

篠田さん「本当の意味で男女の待遇に差がなくなって、『男女がフラットになっているかどうか』を意識しない時が来ればいい」

ダイバーシティの理想は、まさにその形。だが、篠田さんや川島さんの感覚からすれば、現実はまだその状況になっていないようだ。では、長年女性の活躍を推進してきた大西さんはどう見ているのか。川島さんが「いつになったら男女はフラットになりますか?」と尋ねる。

大西さん「完璧なフラットになるには…、10年後にはすごく変わるはず。どこへいっても男女の差を意識しなくて、さらに社員の比率も男女でバランスが取れているのは10年後になるのではないでしょうか。ただ、すでに霞が関やベンチャー企業は女性が活躍できる土壌ができつつあります。今変わらなければいけないのは、大企業ではないでしょうか」
元・三越伊勢丹代表取締役社長の大西洋さん
そういったなかでポイントになるのが、女性の出産に対する企業の姿勢だと大西さんは考える。「これは環境として配慮しなければいけません。女性の出産をきちんと会社が配慮して、フェアな評価や適材適所な配置ができればいい」と話す。
ファシリテーターを務めたifs未来研究所所長の川島蓉子さん
川島さん「確かに結婚はタイミングを想定できますが、出産は思いもよらぬ瞬間にやってきたりします(笑)。その辺り、篠田さんのほぼ日はどうされてますか?」

篠田さん「うちの会社は裁量労働を目指しているので、いつどこでどう仕事をしてもOKな風土なんです。ですから、子どもができて会社にいる時間が短くなっても、その中でうまく仕事ができる方法を、上司含めてみんなで考えます。社員70名ほどの会社なので、一人辞めると大変。子どもがいても仕事を続けてもらうことがみんなにとって嬉しいんです」
株式会社ほぼ日のCFOである篠田真貴子さん

■育児を経験すると、社員のスキルや“ものの見方”が成長する

出産のあとには育児が待っているが、篠田さんは「出産は女性しかできませんが、育児は男女共にできます。ですから、育児は旦那さんや保育所と分担して、早めに職場復帰する女性がいてもいい」と言う。実際、彼女自身も早く復職したかったようだ。

大西さん「三越伊勢丹でも、昔は出産から1〜2年で復帰する女性が多数でしたが、最近は3〜4ヶ月で復帰するケースもあります。それは保育所の存在も大きいでしょうが、一方で考え方が多様になったのでは。“お母さんは家にいるべき”ということではなく、小さい時にお母さんが働いている姿を見て、子どもが親に感謝することもあります」

川島さん「男性も育児を経験してみるのはいいことですよね?」

篠田さん「はい。赤ん坊がいると、その生活経験だけで成長しますから。育児は時間のない中でやりくりしなければいけないので、優先順位付けがうまくなるんです。また、世の中や人に対する見方の幅も変わりますね。会社としても、産休を取って戻って来た社員はありがたいんです」
話はその後、「ワークライフバランス」というテーマに移った。働き方はこれから多様化し、労働時間や昇進、リタイアのタイミングなども変わるだろう。その中で人はどこに幸せを見つけるか。大西さんは「ワークとライフを無理に分ける必要もないでしょうし、ワークが楽しければそれでいいという考えもあるはず」という。

■アウトプットの求められる今後、組織はワークショップ型になるべき

さらにここから、3人は「ビジネスパーソンの幸せ」について考え出す。それは篠田さんのこんな発言がきっかけだ。

篠田さん「何が幸せかは一人一人違うと思います。ただ、過去の構図や通例は本当に幸せだったのか…と。たとえば、多くのビジネスマンが昇進に重きを置いて来ましたが、それが本当に本人の幸せだったんでしょうか」
大西さん「そういう考えの人は多かったですね。係長から課長、部長になるというステップを幸せに感じる男性は少なくありません。なぜなら、今と違う自分を将来に描けるのが楽しいのです。本来はそれが自己実現であるべきですが、ビジネスマンの多くは肩書きや階級に当てはめてしまう。ただそうなると、昇進が望めない、自分の将来を描けなくなった時にモチベーションが崩れてしまいます。」

働く人それぞれが、どう自分の将来像を描いていくか。それは、男女に関わらず共通のテーマだろう。さらに終盤、働き方が変わりゆく中で、企業やビジネスパーソンにとって大切な考え方を、大西さんと篠田さんが教えてくれた。

大西さん「これからは労働時間で成果を考えるのではなく、その人がどれだけアウトプットできるかが重要。会社も同様で、トップダウンでアウトプットを出すのではなく、組織一つ一つにおいて、役員から一般職までそれぞれワークショップ型になって、議論を交わし、アウトプットを出さなければならない時代かと思います」

川島さん「つまりクリエイティブとイマジネーションが求められますよね。でもそれってどう磨くべきですか?」

大西さん「確かにこれは『努力しろ』といっても難しいかもしれません。ただ、現状アウトプットが苦手な人も、環境を変えるとうまくいくこともあります。大きな組織ではくすぶっていたのに、組織が変わって一気に活躍した人もたくさん見てきましたから」

篠田さん「どこに身を置くかで人は変わりますよね。私も今の会社ではきちんとしているタイプに見られますが、前の会社ではかなりの変わり者扱い(笑)。だから、環境で変わる面もあるかもしれません。それを見極めてあげることも大切ではないでしょうか」



今後、働き方が大きく変わっていく中で、働く人をマネジメントする側も同様に変化が求められる。「男女」の意識がなくなりフラットになること。役職とは違うモチベーションを与えること。さらには、一人一人の環境にも配慮しながらアウトプットできる組織になること。これらが、企業や社会の未来を明るくしていくのかもしれない。

text by Taro Arii

photography by Kazushige Mori