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【おとなの週末】知って観て育てる 盆栽ことはじめ

盆栽って、地味なイメージがあるかもしれませんが、実は今、世界中で大人気なのです。

そこで、基本知識から、正しい観賞方法、初心者でも始めやすいミニ盆栽の育て方まで徹底的にお教えします。いざ行かん、“小さな宇宙”盆栽の世界へ!

世界中でブーム“BONSAI”が今アツい

「WBC」といっても野球の「ワールド・ベースボール・クラシック」ではない。「WORLD BONSAI CONVENTION」、つまり盆栽の世界大会のことだ。

4月27日から30日まで、さいたまスーパーアリーナなどで開催されたこの大会は、1989年に旧大宮市(現・さいたま市)で第1回大会が開かれて以来、4年に1度行われている盆栽のオリンピックなのだ。アメリカ、韓国、ドイツ、アメリカ、プエルトリコ、中国と世界各地を回り、28年ぶりに“ご本家”の日本に戻ってきた。

今や盆栽愛好家(つまりプレイヤー)は世界で1000万人超というから、野球よりもはるかに世界的な規模で、根を張り、枝を伸ばしているといえる。

ならば日本の至宝を見に行こうと、盆栽歴ゼロの私、ライター・飯田守、編集・戎誠輝、カメラマン・鵜澤昭彦の3名で出かけた。まず驚かされたのが、入場前の大行列! 開会式の初日を除く3日間の来場者は4万5000人を超え、会場はその賑わいと熱気に溢れていた。しかも40の国と地域から1500人を超える外国人が来場したのだから、その国際色の豊かさに圧倒されてしまった。

そして、盆栽の持つ生命感に満ち満ちた見事な幹や枝ぶりの美しさと迫力に、思わず立ち止まり見入ってしまうのだった。
盆栽作家・木村正彦氏と弟子のイタリア出身のアレッサさん、ロシア出身のアンドレさん、中村駿一さん。日本で盆栽を学ぶ外国人が増えている

盆栽は自然の縮図 世界的作家が語る盆栽の魅力

盆栽の魅力って、いったい何なんだろう? そんな素朴なテーマを、超一流の盆栽作家に問いかけてみた。

「もっともよくある基本的な質問です」と微笑みながら答えていただいたのは、WBCで国内外のプロや愛好家に向けてデモンストレーションを行った、木村正彦氏。内閣総理大臣賞を26回受賞するなど数々の受賞歴を誇る、“世界でもっとも名を知られる盆栽作家”だ。

「盆栽は自然の縮図といわれています。風雪に晒されて生きてきた樹齢数百年の樹が、作者の感性で鉢の中に新たな姿を描き出す。私の師匠にも言われたことですが、そこに作者自身を表現するのです。品性、感性、知性、感情。その人の内に秘めたものが現れるのです。だから人間が卑しいと、卑しい盆栽ができあがってしまいます」。

これはどうやら書や絵画、あるいは茶道などに通じるアーティストの世界観にも似ていそうだが、盆栽がより特徴的なのは、そこに植物という生命が存在していることにある。

「口をきかない樹ですが、その聞こえぬ声を聴き会話することが大切で、愛情をかけてやればかけるほど応えてくれるのも盆栽の魅力なのです」

物言わぬ樹が、土の乾きや葉の色の変化、枝の伸び具合などで何をしてほしいのかを語りかけてくるという。そのお世話をすることで愛おしむ心が芽生え、樹もまた反応してくれる。

「母親が赤ちゃんを抱いたときと同じように、母(盆栽家)の愛情は赤ちゃん(盆栽)にも通う。どんな樹にも必ずいいところがあるので、そこを引き出してあげる。盆栽も生きて成長するので完成はなく、今年よりも来年、来年よりも再来年のほうがもっと良くなっていく。その過程がまた何とも楽しいのです」

これはまさに子育てそのもの。この世知辛い世の中で、何だか少し優しい気持ちが持てそうな気がしてきた。それはどの国の人にとっても同じものだし、また海外からすればそこに「日本の美」を感じられるのだろう。

盆栽の魅力を知ったことで“凡才”の私も俄然興味が沸いた。もっと知りたい、観たい、育てたい。さて次はどこへ行こうか。

■正面だけ観るのは素人!正しい盆栽の観方

盆栽を愉しむときにどこを見ればいいのか、「大宮盆栽美術館」で盆栽技師を務める中村慎太さんにお話を伺いました。すると、様々な見方があることが発覚! おでかけ前にぜひお読みください。

一 根を観る!

最初に眼をやるのが根の張り方。土を鷲掴みする、土を食むような力強い根の形態は、生きてきた歳月の表れそのものといえる。あらゆる方向に根を伸ばす「八方根張り」は理想形のひとつといわれる

二 正面から観る!

盆栽には正面と裏、顔と背中がある。その木の一番の見どころを盆栽作家は見極めて、鉢の正面と合わせて植えているので、じっくりと正面から枝ぶりを観察しよう。その木の全体像と特徴を把握するのだ

三 下から枝ぶりを観る!

ちょっと”ツウ”な見方が、腰をかがめて下から幹や枝を見上げること。自然界の大樹を縮小したのが盆栽だから、その視点で見上げることで、1mに満たない小さな樹から小宇宙のような生命の広がりを感じられる

四 ジン、シャリを観る!

風雪に晒された松や真柏では、幹や枝の一部が枯れて白い肌となることがある。これが枝先の場合を「ジン(神)」、幹の一部の場合には「シャリ(舎利)」と呼び、緑の葉と好対照の美しさを見せることがある