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- 最も多い突然死、虚血性心疾患・心筋梗塞とは? -

心筋梗塞を発症しやすい「魔の時間帯」とは?

突然死の原因として上位に挙がる心筋梗塞。いつ襲われるかわからないイメージが強いが、じつは心筋梗塞を発症しやすい“魔の時間帯”が存在するという。心筋梗塞を発症しやすい時間帯について、専門医に聞いた。

■今回のアドバイザー
池谷医院 院長
池谷敏郎さん

医学博士。心臓、血管、血液などの循環器系のエキスパートとして、さまざまなテレビ番組に出演し、わかりやすい解説が好評を博す。『血管力』(成隆出版)、『血管を強くして突然死を防ぐ!』(すばる舎)など、著書多数。

心筋梗塞でもっとも気を使うべきは“朝の数時間”

心筋梗塞が発症しやすい「魔の時間帯」とはどういうものだろうか。

池谷さん「医師の間では、朝起きてからの数時間は“魔の時間帯”と呼ばれており、起床から1時間以内は心筋梗塞の発症リスクが高いという統計も出ています。突然死を予防するならば、1日のうちでとくに重要な時間帯なのです」

そのメカニズムとは?

池谷さん「心筋梗塞の発症は、自律神経が深く関わっています。自律神経には、活発に活動するために体を緊張させる『交感神経』と、睡眠時に全身をリラックスさせる『副交感神経』があります。とくに、交感神経が優位の状態は、眠っているときに比べて心拍数が増え、血管が収縮して血圧が上がります。朝は睡眠時の副交感神経が優位だった状態から、交感神経に切り替わり、全身を目覚めさせる不安定なタイミングなのです。

交感神経が優位になるのは、日中の活動に備えて細胞に酸素や栄養を全身にスムーズに行きわたらせるためなので、必要不可欠なことなのです。しかし、生活習慣病や加齢によって、血管内の動脈硬化が進んでいる人にとっては、血圧の上昇によって血管が破れたり、血管内が詰まったりして心筋梗塞を起こす、というリスクが高い状況といえます」

心筋梗塞に注意するなら、起床後すぐの運動は絶対NG!

池谷先生によれば、心筋梗塞の予防には、起床時の行動がカギだという。

池谷さん「まず、目覚まし時計のかけ方から注意が必要です。スマホを目覚まし代わりにしている人も多いと思いますが、熟睡しているところに大音量の目覚ましが鳴ると、かなり強い刺激を自律神経に与えます。すると、交感神経系が一気に緊張し、血管の収縮や心拍の上昇、血圧の上昇が急速に行われ、血管事故のリスクを高めます。大音量の目覚まし時計が心筋梗塞の引き金となる可能性があるので、目覚ましには時間をかけて少しずつ大きな音になる“スヌーズ機能”を活用してください」

目覚まし以外にも、気をつけるべき生活習慣があるという。

池谷さん「起床後すぐにジョギングをしたり、午前中にジムで筋トレをしたりする人も、心筋梗塞の危険があります。やはり、体が不安定な状態で急激に活動をはじめるのは、かなりの負担になります。ましてや、普段運動不足でメタボ検診(特定健康診査)の数値に問題がある人が、運動不足解消のために、起きがけに走るのは避けてください。運動をする場合は、夕方から夜にかけての時間帯がおすすめです。また、突然走るのではなくウォーキングからはじめましょう」

それでは、朝はどのように過ごすべきなのだろうか?

池谷さん「朝起きてからの1時間は、水分や朝食を摂ってゆっくり過ごしてください。朝食には、ヨーグルトやフルーツなどを食べておくことをお勧めします。ミネラルとタンパク質をとることで水分が血管内に維持されやすくなり、脱水を改善して血管事故の予防に役立ちます。さらにいえば、大豆発酵食品を食べると、血中の悪玉コレステロールを下げることが期待できるので、動脈硬化の予防に役立つからです。大豆発酵食品は納豆が代表的ですが、最近では豆乳を乳酸発酵させた豆乳ヨーグルトも市販されています。自分の好みやライフスタイルに合わせて上手に取り入れてみてください」

最後にアドバイザーからひと言

「もちろんすべての心筋梗塞が朝に起きるわけではありませんが、心筋梗塞を予防するならば魔の時間帯には十分気をつけてください」

Text by Miki Ohnuki(Seidansha)