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SRTデーモン──ウィリーできる邪悪なマッスルカー

エネルギー消費量とCO2排出量の削減は、いまや自動車メーカーにとって最重要テーマのひとつである。排ガス規制を考慮しない大排気量、大パワーのクルマは前時代の遺物となりつつあり、各国のモーターショーには電気を動力源とするIoT家電のような未来のクルマが並ぶ。そんななか、2017年4月に行われたニューヨークオートショーで、時代に抗うかのような“狂気のモンスターマシン”が発表された。その名は、ダッジ『チャレンジャー SRT デーモン』。最高出力は驚異の840馬力、あり余るパワーとトルクにより前輪を浮かせたウィリー走行まで可能とする、邪悪なまでに猛々しい史上最強・最速のマッスルカーである。

ゼロヨン加速は市販車最速の9.65秒! 邪悪な速さの『チャレンジャー SRT デーモン』

ダッジは「パワーこそ正義」というべき豪快でマッチョなクルマを得意とするアメ車ブランドだ。すでに生産終了したが、“現代版コブラ”として開発された『ヴァイパー』もダッジが作ったスポーツカーである。2003年のデトロイトショーでは、この『ヴァイパー』のアルミ製8.3L V10エンジンをそのまま搭載したマンガに出てくるようなコンセプトバイク『トマホーク』を発表。問い合わせが殺到したために、限定10台を約6500万円の価格で販売している。

しかし、“イカれている”という意味において、4月のニューヨークオートショーで発表された『チャレンジャー SRT デーモン』は過去のどのモデルよりも上だ。

パワーユニットは、6.2LのHEMI仕様DemonV8エンジン。「HEMI(ヘミ)」とは、ダッジブランドを展開するクライスラーのパーツ部門で、NASCAR(ナスカー)などのレース活動を行っている「MOPER(モパー)」が仕上げた高性能エンジンのこと。スーパーチャージャーで過給することにより、最高出力はじつに840馬力に達するという。これはV8エンジンの量産車としては歴代最高馬力で、もっともパワフルなフェラーリを40馬力も上回る。

この常軌を逸した大パワーにより、『SRT デーモン』は0-100km/hを2.3秒で加速し、クォーターマイル(約400m)にも市販車最速の9.65秒で到達する。スーパーカーのさらに上をいく怪物ぶりで、ダッジが自らそう呼ぶように、まさに「邪悪な速さ」だ。

クルマでありながらウィリー走行を達成し、ギネスにも認定された『SRT デーモン』

さらに『SRT デーモン』が“イカれている”のは、このクルマが加速力によってフロントタイヤを持ち上げる──つまりウィリーまで可能とすることだ。

スタートと同時にアクセルを一気に踏み込めば、後輪から猛然と白煙を噴き出し、その大パワーによって前輪を浮かせ、そのまま2.92フィート(約89センチ)走るのである。『SRT デーモン』は世界で初めて前輪リフトを達成した量産車として、ギネスワールドレコーズの認定も受けている。「正気の沙汰じゃない」との声が聞こえてきそうだが、ダッジは「パフォーマンスカー業界全体の基盤を揺るがすことになるだろう」と胸を張る。まるで「誰だってクルマでウィリーしたいだろ?」とでも言いたげに。
当然ながら『SRT デーモン』は限定生産モデルで、2017年秋以降にアメリカで3000台、カナダで300台が販売される予定という。しかし、こんなクレイジーなクルマを操ることのできるドライバーは滅多にいない。使い道として想像できるのは、アメリカで多大な人気を集めるドラッグレースに出場することだが、ドラッグレース団体の「NHRA(ナショナル ホットロッド アソシエーション)」は、あまりに速すぎるとして『SRT デーモン』の出場を禁止してしまった。

強大すぎるパワーとトルクによってウィリーもできる邪悪なマッスルカー。環境への配慮はもちろん大切なことだが、クルマ好きにとって、こうした突き抜けたマッスルカーが登場するといつだってワクワクさせられる。

Text by Kenzo Maya