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デイムラーダブルシックス──バブル期の名車を買う

バブル景気真っ盛りだった1990年前後、富裕層の間では、メルセデス・ベンツ『560SEL』やBMW 『750iL』、トヨタ『セルシオ』などの高級サルーンが人気を集めた。いずれもメーカーが威信をかけて開発したフラッグシップモデルだ。しかし、この時期に登場した高級車にはもう一台、忘れてはならない名車がある。それが、ジャガー『XJ』にV型12気筒エンジンを搭載した優雅かつクラシカルなスタイリングの英国製サルーン、デイムラー『ダブルシックス』である。当時、『ダブルシックス』の新車価格は1000万円を超えていたが、現在なら100〜200万円で購入できるという。若き日に憧れたクルマを手にするには、まさにお手頃な価格だ。

バブル期に1000万円超だった『ダブルシックス』が、現在なら100〜200万円で買える

デイムラーは、1900年に英王室初の御料車に指名されるなど、古くから手作りで高級車を製造していたイギリスの自動車メーカーだ。

しかし、戦後に大量生産による大衆車の需要が高まると、デイムラーは経営が悪化し、1960年にジャガーによって買収される。ジャガーは、同社の各車両をベースに内外装の高級感を高めたモデルに「デイムラー」の名を与え、通常のジャガーよりも年齢層が高めの紳士に向けた高級車ブランドと位置づけた。

このデイムラーのラインナップのうち、V型12気筒エンジンを搭載したモデルが『ダブルシックス』である。ベースとなったジャガー『XJ』は、1980年代後半から1990年代初めのバブル期に当時の富裕層の間で人気を集めたが、なかでも『ダブルシックス』は特別なモデル。当時の新車価格は1000万円以上、最終型となる1992年モデルには1400万円もの値がつけられていたのだ。

「それから約30年が経った現在、『ダブルシックス』は100~200万円で購入することができます」と話すのは、神奈川県川崎市にあるジャガー・ダイムラーの専門店、「エムガレージ」の磯部辰男氏である。

「6気筒の『XJ6』も十分にいいクルマですが、12気筒の『ダブルシックス』のフィーリングは別格です。乗っていると、本当に気持ちがいい。ドライブ中、ビルに映る自分のクルマを見ると格別な気分を味わえます」
(C)Youmomentu
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『ダブルシックス』は故障が多いは誤解、きちんと整備をすれば意外なほど壊れない

問題は、『ダブルシックス』が「故障が多くて苦労するクルマ」といわれていることだろう。いくらお手頃価格であっても、故障が多いクルマには手を出しにくい。しかし、磯部氏によれば、「故障については、まったく問題ないとは言い切れませんが、大きな心配は必要ありません」という。

「『ダブルシックス』はコストや効率が重視される前の時代のクルマなので、もともと作りはオーバークオリティ。しっかりと整備さえすれば、エンジンもトランスミッションも意外なほど壊れません。一度仕上げたクルマなら、車検ごとの整備でも問題がないほどです」

『ダブルシックス』のウィークポイントは、電気系統、燃料系統、そして各部のシーリングだが、それらもきちんと整備すれば不安なく乗れるという。

「整備費は、納車時に100万円のクルマで100~200万円、200万円のクルマなら50~100万円ほど。乗り出し価格は300万円と考えていただければいいでしょう。それだけ整備をすれば、ばっちり仕上がります。それでも故障が心配なら、ファイナルモデルと呼ばれる1990年以降のモデルがおすすめ。ファイナルモデルは、特に電気系統などの信頼性が上がっています」

整備に200万円と聞くと高く感じるかもしれないが、トータルの費用は300万円。これはBMWのMINIブランドの新車と同等か、それ以下の価格である。

「1000万円を超えるクルマだと手も出しづらいですが、『ダブルシックス』は贅沢さと価格、実用性のバランスがほどよくとれています。300万円の出費なら、大人の趣味として愉しめるレベルではないでしょうか」

国内に現存する『ダブルシックス』は300台程度、いまが名車に乗る最後のチャンス

ただし、この300万円には内外装の費用は含まれていない。なぜなら、ヒストリックカーやクラシックモデルはオーナーによって仕上がりの好みが異なるからだ。

「機関系は実用に耐えうるレベルまで整備を施しますが、内外装がそのままなのは、『経年劣化の味わいを愉しみたい』『新車のようにピカピカにして乗りたい』など、いろいろな方がいらっしゃるためです。また、少しずつクルマをご自身の好みに仕上げていっていただきたい、という思いもあります」

クルマに対するこだわりは人それぞれ。機関系ではない部分については、各オーナーが予算と好みに応じて仕上げていくのがクラシックモデルの愉しみ方なのである。
「もしかすると、10年後、20年後には古いクルマに乗ることが許されない時代になっているかもしれません。数が限られているだけに、『ダブルシックス』もほかのヒストリックカーのように価格が高騰する可能性もあります。興味がある方は、今のうちに『ダブルシックス』に乗って12気筒のフィーリングを味わってください」

磯部氏は、日本に現存する『ダブルシックス』は「多くても300台程度ではないか」と推測する。バブル期に登場した高級サルーンのなかでも、その頂きを担う一台だったデイムラー『ダブルシックス』。40〜50代が若き日に夢見たこのクルマに乗るには、タイミング的にもいまがベストなのである。

Text by Muneyoshi Kitani