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アストンマーティンAMR――頂きを極める新ブランド

100年以上も前の話だ。イギリス、バッキンガムシャーのアストン・クリントンで行われたヒルクラムレース。そこで優勝した青年が、車好きで、特にレースにこだわった、ライオネル・マーティンである。彼が、友人でありエンジニアだったロバート・バムフォードと設立した会社は、アストン・クリントンの「Aston」とライオネル・マーティンの「Martin」から取り、『Aston Martin(アストンマーティン)』と名付けられた。このエピソードからもわかるように、アストンマーティンのDNAには、レースへのこだわりが脈々と流れており、培ったノウハウは、常にロードカーへとフィードバックされた。そして、その集大成ともいうべきブランドが誕生した。『アストンマーティン AMR』だ。

アストンマーティンAMRが送り出す2台、『ラピードAMR』『ヴァンテージAMR Pro』

「AMR」は、モータースポーツで数々の伝説を残してきたアストンマーティン・ロードカーの伝統を継承した新しいブランドだ。

アストンマーティンとモータースポーツといえば、1959年のル・マン24時間レースでの歴史的勝利を外すわけにはいかない。この勝利は、1951年、中興の祖であるデイビッド・ブラウン卿により改良され、大幅に魅力を増したVantage(ヴァンテージ)仕様のモデルが導入されたことに端を発する。余談だが、アストンマーティンのシンボルとなるクルマに冠される「DB」の称号は、デイビッド・ブラウン卿から取られたものである。

近年では、2004年にアストンマーティンレーシングチームを結成して以来、WEC(FIA世界耐久選手権)で活躍を続け、2016年にはWEC GTドライバーズ選手権のタイトルを獲得。また、同年のル・マン24時間レースでも3つのクラスで優勝を飾っている。そのレーシングチームのノウハウを受け継ぐ新ブランド「AMR」によってジュネーブで発表されたモデルが、『Rapide(ラピード)AMR』と『ヴァンテージAMR Pro』の2台のコンセプトモデルだ。

600馬力、最高速度336km/h、将来のAMRモデルのあり方を示唆する『ラピードAMR』

4ドア・スポーツカーの『ラピードAMR』は、将来のAMRモデルのあり方を示唆するモデルである。心臓部には、600psを叩き出す6L V12 自然吸気エンジンを採用。トップスピードは、約336km/hに達する。

ボディはブランドカラーである「スターリング・グリーン」。アクセントカラーとして明るいライムグリーンが使われている。エクステリアでは、各パーツにカーボンファイバーを使用。また、専用デザインのフロントのスプリッター、サイドシル、リアデッキリッドのエアロフラップなどにより、独自の強い個性が表現されている。

インテリアでは、カーボンファイバー製軽量フロントシートが存在感を示す。ダークナイトのアルカンターラにライムグリーンのアクセントが印象的だ。カーボンファイバーは、ウォーターフォール、センターコンソール、ドアケーシングなどにも使われており、ラグジュアリーでありながらスポーティーな雰囲気を醸し出している。

最もパワフルな究極のヴァンテージ、サーキットに特化した『ヴァンテージAMR Pro』

『ヴァンテージAMR Pro』は、サーキット走行を前提に性能を徹底的に強化したよりマッチョなモデルだ。まさに、「史上最もパワフルな究極のヴァンテージ」と呼ぶにふさわしい。心臓部は507psを発揮するV8 GT4レース・エンジン。足回りには、レース仕様のアジャスタブル・サスペンションを採用している。

スタイリングは、モータースポーツの本質に迫ったもの。大胆なフルハイト・グリルを備えたフロント・バンパー、フロント・エアダム及びスプリッター、フロント・フェンダー、サイドシルなどを専用に新開発。さらにリア・ディフューザーのデザインにも手を加えた。

カラーリングは、レースで活躍する『ヴァンテージGTE』に倣い、『ラピードAMR』と同様に「スターリング・グリーン」のペイントにライムグリーンのアクセントを配した。また、ボンネットとリアフェンダーは、WECチャンピオンマシンと同じものが使用されている。

もちろん、インテリアもカーボンファイバーを多用したレーシーなデザインだ。目を引くのは、シックなダークナイト・アルカンターラに配されたライムグリーンのアクセント。さらに、専用開発されたロールケージも備わる。

2台は最初のステップ、今後はアストンマーティンの全モデルに「AMR仕様」が登場

『ヴァンテージAMR Pro』は7台、『ラピードAMR』は210台の限定生産となる。この2台は最初のステップであり、今後は、アストンマーティンが提供するモデルのそれぞれに、AMR仕様が登場するという。主要なAMRモデルの開発は、アストンマーティン本社のエンジニアリングチームが担当。AMR Proモデルの開発に限っては、パーソナライゼーションカスタマイズ部門である「Q by Aston Martin」のアドバンスド・オペレーション部門に委ねられるそうだ。

アストンマーティンの本質を具現化した「AMR」は、ブリティッシュスポーツの頂きを極めるブランドとなることだろう。これからの展開から目が離せない。

Text by Tsukasa Sasabayashi