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『クラシックレンジ』——初代レンジローバーに乗る

オンロード・オフロードを問わない高い走行性能、威風堂々たるスタイリング、比類なきラグジュアリー性から「4WDのロールスロイス」と呼ばれるランドローバーの旗艦『レンジローバー』。近年、欧州のプレミアムブランドにおけるヘリテージブームの影響もあり、このレンジローバーの初代モデル、通称『クラシックレンジ』の人気が高まりつつある。ランドローバーも2017年2月、同社のレストア部門の技術者が1978年式のレンジローバーを完全レストアした「クラシック レンジローバー」を披露し、10台限定で販売することを発表した。しかし、日本に現存するクラシックレンジの台数はそれほど多くない。いまこそこのクルマに乗ることのできる最後のチャンスなのである。

デザインが評価され自動車として初めてルーブル美術館に展示されたクラシックレンジ

レンジローバーは、1970年の初代モデルの登場当時から高級車と謳っていたわけではない。しかし、当時のイギリスでは、高い走破性・機能性・快適性がワンパッケージになったオフローダーは目新しく、特権階級の貴族たちがレンジローバーを高く支持。昼は狩りや農場視察に使い、夜は正装して劇場に出かけるライフスタイルをひとつのクルマで行えたことが、貴族の心をつかんだ大きな要因だった。

この初代モデルが「クラシック」と呼ばれ、人気を集めている理由はいくつかあるが、もっとも大きいのはその普遍的ともいえる高いデザイン性にある。

「スクエアなボディに加えて、丸目2灯というクオーソドックスなデザインは、時代や流行に左右されない魅力があります。クラシックレンジはデザイナーや音楽家、ファッション関係などの方たちに高く支持されていますが、それはこのクルマのデザインが芸術家の琴線に触れるからでしょう」。そう語るのは、東京・目黒区にあるランドローバー専門店「レンジャース」で店長を務める篠原勝さんだ。

実際、クラシックレンジは、その機能的で研ぎ澄まされたデザインがアートとしても評価され、自動車として初めてパリのルーヴル美術館に展示されている。また、メルセデス・ベンツ『Gクラス』と同様のスクエアでクラシカルなスタイリングを持ちながら、年式が比較的新しいことも人気の理由のひとつだろう。

「クラシックレンジは基本設計がしっかりしているので、整備さえしっかり行っていれば普段使いしてもまったく問題ありません。ユーザー層は、かつてこのクルマに憧れた40~50代の方が中心ですが、初めての愛車にクラシックレンジを選ぶ若いオーナーもいらっしゃいます」

メイン写真と下の写真は、ランドローバーによって復刻された1978年式の『クラシック レンジローバー』である。

内外装を自分好みにカスタマイズし、「世界に一台だけ」のクラシックレンジを作る

もうひとつクラシックレンジの魅力に挙げられるのが、内外装をカスタマイズして自分好みに仕上げることだろう。「世界に一台だけ」のクルマを作るのも、ヒストリックカーならではの愉しみ方である。篠原さんの店でも、オーナーの好みに合わせてカスタマイズするビスポークプログラムを用意しているという。

「弊社では5段階の整備プランを用意しており、そのなかには内外装のリフレッシュを含むプランもあります。外装のオールペイントや内装の張替えを行なうと同時に、カラーも自由に選ぶことが可能です」

ボディカラーは好きな色が選べるだけではなく、通常モデルにはないツートンカラー仕上げにすることもでき、インテリアもシートやルーフライニングのカラーを自由に選択できる。オプションになるが、ウッドパネルのリフレッシュやナビ・オーディオのインストールにも対応するという。

「ベースとなるクラシックレンジの車両価格は200〜300万円。これに30万円からの整備プラン、ビスポークが加わる形です。オーナーのなかには、1000万円近くの費用をかけて自分だけの一台を作る方もいらっしゃいます。『世界に一台だけ』というのは、お金には換算できない特別な価値があり、一生ものの宝物。クルマの隅々まで『自分自身』を反映させているので、ビスポークで仕上げたクラシックレンジを手放す方はまずいません」

国内に現存するクラシックレンジは1000台未満、価格相場が上がる前の今がチャンス

もちろん、初代モデルが登場してから40年以上経つクルマだけに、購入後はメンテナンスなど日々の維持が重要となる。しかし、もともと頑丈で高性能のためか、そのメンテナンスにかかる手間や費用も神経質になるほどのものではないという。

「納車時に交換するべき部品をきちんと交換すれば、あとは普通のクルマと同程度の頻度で整備を行えば十分です。日本では容量不足となるラジエーターを弊社のオリジナルパーツに交換し、脆弱なエアサスペンションを一般的なコイルスプリングに換えるなど、クラシックレンジのウィークポイントの多くは改善することができます。

なにより、調子を維持するコツはとにかく『乗ること』。走行中は電気系統に電気が流れてパーツの動きが良くなりますし、エンジン内部にもオイルが回ります。実際、毎日乗っている人のクルマのほうが調子がいいですね」
篠原さんによれば、日本国内に現存するクラシックレンジの数は、いまや1000台に満たないという。増えることも考えづらく、人気が高まっているだけに、おそらく今後は価格も価値も上がる一方となるだろう。手の届く価格相場で動いているいまこそ、クラシックレンジを手に入れる最後のチャンスかもしれない。
Text by Tetsuya Abe