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- スーパーカーブランド【フォルクスワーゲン】 -

『I.D.BUZZ』—次世代EVとして甦ったワーゲンバス

「ワーゲンバス」ことフォルクスワーゲン『タイプ2』は、1980年代のサーファーブームを知る大人の男性にとって懐かしく、憧れだったクルマだ。60年代後半のアメリカのヒッピームーブメントの際に西海岸の若者の支持を集めたワーゲンバスは、80年代に入ると日本でも人気となり、サーフボードを積むとサマになるおしゃれなクルマとして、マツダ『ファミリア』とともにサーファーたちの定番となった。その唯一無二の存在感から、いまだに熱心なファンも存在し、キャンパーに改造してアウトドアライフを愉しむ人も多い。このワーゲンバスのデザインをモチーフにしたEV(電気自動車)のコンセプトモデルが2016年1月のデトロイトショーに登場し、会場を沸かせた。

80年代のワーゲンバスと同様に、サードプレイスとしての性格を受け継ぐ『I.D.BUZZ』

『タイプ2』は、もともとフォルクスワーゲンの商用車部門が取り扱い、マイクロバスや貨物車、トラックなどの用途のために開発されたクルマだ。

しかし、かつてサーファーに愛用され、現在もキャンパーとして活用するユーザーが多いことでもわかるように、1980年代以降は極めて趣味性の高い、「サードプレイス」用途のクルマとして人気を集めてきた。

フォルクスワーゲンがデトロイトショーで公開した『I.D.BUZZ』は、フロントマスク中央の大きな「VW」エンブレム、ウェストラインを境に塗り分ける2トーンカラーなど、あきらかに1950~1960年代に生産されたこの『タイプ2』の初期モデル、「T1」をモチーフとしたコンセプトモデルだ。当然、商用車ではなく、サードプレイスとしての性格を受け継いでいる。

車名の「I.D.」は、アイデンティティ、アイデア、個性、インテリジェント、アイコニックなデザインなどの意味を持つ。「BUZZ」はもちろん、バスにかけたもので、“ブンブン”という擬音語の意味も含まれているという。

完全自動運転のうえ、『ゴルフGTI』を凌ぐ0-100km/h加速力を持つワーゲンバス

キュートさも漂うボディは意外と大柄で、全長4,942mm×全幅1,976mm×全高1,963mm。日本未導入のフォルクスワーゲンの既存モデル、トランスポーターの「T6」に近い。

パワートレインは、2基の電気モーターが搭載される4輪駆動で、システム合計出力は374ps。0-100km/h加速は5.0秒と、これも意外なことに、『ゴルフGTI』をもしのぐ俊足の持ち主だ。ただし、電力消費を抑えるために最高速度は161km/hに制限される。その結果、航続距離は、111kWhのバッテリー容量により最大600kmとなるという。

次世代EVだけに当然、自動運転にも対応する。しかも、ドライバーズシートを180度回転させた状態でも走行できる「完全自動運転」を見据えたものだ。レーザースキャナー、超音波センサー、レーダーセンサー、カメラシステムに加え、クラウドからの交通情報で完全自動運転を実現するという。

変幻自在で快適・広大な室内空間の『I.D.BUZZ』、2025年以降に市販化の可能性も!?

自宅、職場に次ぐ「第3の居場所」という位置づけとなるだけに、室内は広く、圧倒的に快適な空間となっている。

完全自動運転車としてコンセプトされたので、ハンドルにはスポークがなく、インストゥルメンタルパネルに押し込むことで格納が可能。同時に、それによって自動運転に切り替わる。床下にバッテリーを備えたことでフラットとなったウッドフロアには、最大8名分のシートが備わり、運転席のほか、助手席までもが180度回転するシートアレンジが施された。このいかようにも変化するインテリアに加え、大型タブレットやAR対応のヘッドアップディスプレイも装備される。エクステリアをぐるりを囲むように光るアンビエントライトは、自動運転中であることを知らせるインフォメーション機能を持たせたものだ。

フォルクスワーゲンは、これまでも何度か『タイプ2』をモチーフにしたコンセプトモデルを発表してきたが、いずれも市販化されず、コンセプトで終わっている。

ただし、フォルクスワーゲンは2020年から『I.D.シリーズ』を展開し、「2025年にEVの販売台数100万台を目指す」としており、この数字を達成するために複数のモデルがラインナップされることは間違いない。そうなれば、トランスポーターに代わるEVミニバンも必要となるため、『I.D.BUZZ』の市販モデルの登場も期待できる。

かつてワーゲンバスにサーフボードを積んで海に出かけた若者は、余裕のある大人の男性になり、休日に家族や友人とともに、キャンプや登山、釣りなどで「バンライフ」を愉しんでいる。次世代EVとして現代に甦ったワーゲンバスは、そんな男たちに夢を与えるコンセプトモデルといえるだろう。
Text by Muneyoshi Kitani