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クルマは●●年に家電化する!? これが未来のミニバン

国内市場ではコンパクトカーに続いて売れ行きがよく、いまや定番カテゴリとなっているミニバン。最近では低燃費のハイブリッドや自動運転機能など、搭載されるテクノロジーもさらに進化している。EV(電気自動車)、そして自動運転機能が実用化されていくなかで、次の世代が家族を持ったときに乗る「未来のミニバン」とはどのようなクルマなのか? この問いに対してFCA(フィアット・クライスラー・オートモビルズ)が導き出した答えが、世界最大の国際家電ショー「CES 2017」で発表されたミニバンのコンセプトカー、『Chrysler Portal concept(クライスラー ポータル コンセプト)』である。

世界最大の国際家電ショーでFCAが発表した『クライスラー ポータル コンセプト』

「CES」は年に一度、米ラスベガスで開催される世界最大規模の国際家電見本市だ。CESは略称ではなく正式名称で、かつては「Consumer Electronics Show(コンシューマ エレクトロニクス ショー)」と呼ばれていた。

そう聞いても、「家電とクルマになんの関係があるのか」と思う人もいるかもしれない。しかし、近年はCESから日本の家電メーカーが姿を消す一方、大手自動車メーカーやEVのスタートアップ企業による出展や記者会見が相次いでいる。「CES 2017」でも、日産のカルロス・ゴーンが基調講演を行ったほか、トヨタやホンダ、BMW、ヒュンダイなどが記者会見を開いた。EVや自動運転技術の進化とともにクルマが「ITデバイス」に近づき、それに伴いCESがモーターショー化しているのだ。

そんななか、年明け早々に行われた今回のCESでもっとも注目を集めたのが、FCAの子会社であるFCA USが発表した『クライスラー ポータル コンセプト』というコンセプトカーだ。これは「ミレニアル世代」に向けた新しいファミリーカーで、デザインを発案したのもミレニアル世代のデザイナー。いわば、次世代をターゲットにした「未来のミニバン」なのである。

デジタルネイティブの「ミレニアル世代」に向けた自動運転機能搭載のEVミニバン

ミレニアル世代とは、1982年から2001年にかけて生まれた世代のことを指す言葉だ。現在16歳から35歳のミレニアル世代は、幼少時からインターネットやデジタルデバイスに慣れ親しんでいる。

このため、『クライスラー ポータル コンセプト』はスマートフォンなどのITデバイスやソーシャルメディアと連動して使用することを前提にしており、ワイヤレスネットワークも完備。クルマを自宅と職場に次ぐ「3つめの場所」と位置づけ、車内の居住性やエンタテインメント性を極めて重視している。『クライスラー ポータル コンセプト』が、自宅でくつろいでいるときと同じようにコンテンツを楽しんだり、職場にいるときと同じように仕事したりできる場所になるという。

車内空間はなによりも快適性が優先され、明るく落ち着いた部屋のようなイメージで統一。6名分が配置されたシートは前後にスライドするだけではなく、折りたたんだり取り外したりと、さまざまな使い方が可能という。クルマの操作はすべてダッシュボードやセンターコンソールに埋め込まれた大型のタッチスクリーンで行われ、ステアリングが脇役のようにコンパクトになっているのが印象的だ。
当然、『クライスラー ポータル コンセプト』はフル充電で250マイル(約402km)以上の航続距離が可能なEVで、アクセル、ブレーキ、ハンドル操作はすべてシステムが担い、SAE(米国自動車技術者協会)による6段階の自動化レベルで「レベル3」以上の自動運転機能を搭載する。レベル3は条件付きの準完全自動運転だが、システムのアップデートによって完全自動運転の「レベル4」へとバージョンアップすることも可能だ。

エクステリアには、フロントとリヤ、サイドのスライドドアの周囲にフルカラーのLEDライトが搭載されるが、これは単に照明や装飾として装備されているだけではなく、ロックの解除や自動運転走行など、クルマの状態を表す機能も併せ持つという。

20●●年、クルマは「買い替える工業製品」ではなく「アップデートするIT端末」になる!?

コストに敏感なミレニアル世代は、50代以上のバブル世代のように、新車が出るたびに高価なクルマを買い替えていくスタイルを好まない。彼らをターゲットとする場合、自動車メーカーにとって重要となるのは、多種多様なモデルを次々に市場に投入するのではなく、顧客のライフステージの変化に合わせてクルマ自体をアップデートすることだ。

FCAが『クライスラー ポータル コンセプト』で示唆したのは、クルマのデザインや内装というより、ミレニアル世代のライフスタイルに合わせてアップデートされるユーザーエクスペリエンスなのである。

ただし、技術やデザインは市販モデルに反映されるかもしれないが、『クライスラー ポータル コンセプト』がそのまま市販化されることはまずないだろう。しかし、パーソナルコンピュータやスマートフォンがそうであるように、アップデートを繰り返して所有する製品とある程度長くつき合っていくという考え方は、次世代のクルマのひとつのあり方ともなるはずだ。

もう「家電みたいなクルマなどつまらない」と嘆いている場合ではない。クライスラーが提案した「未来のミニバン」は、ITデバイス化する未来のクルマの姿でもあるのだ。

Text by Muneyoshi Kitani