ATHLETE01
- 40男が嗜む逸品 -

躍動するアスリートの肉体と内面に迫る展覧会「アスリート展」

日々の鍛錬によって研ぎ澄まされた肉体と感覚…秒単位、ミリ単位、場合によってはそれ以下までを追求するアスリートの身体は、ある種の殺気さえはらんでいるといえるだろう。そんなアスリートの“肉体”と“内面”の秘密に迫る展覧会「アスリート展」が、2017年2月より21_21 DESIGN SIGHTで開催される。

アスリートの“肉体”をビジュアル化して徹底的に解剖

スポーツ界ではこれまで誰もが成し得なかった記録を打ち立てたり、他を圧倒したりするようなパワーや戦術を持つ人がひとり出現すると、不思議なことにそのレベルに比肩する人、さらにその記録を塗り替える人たちが次々と現れてくる。人間の肉体には限界はないのか? そんな疑問がふと頭をよぎることがある。

世界最速の男と呼ばれるウサイン・ボルト選手が持つ「100メートル競争」の世界記録は9.58秒だ。時速にすると実に44.17km/h。凄まじい速さである。また「重量挙げ」の世界記録は、イランのホセイン・レザザデ選手が持っている。その重さ、なんと263.5kgだ(一度バーベルを肩の高さまで持ち上げ、頭の上へ腕が伸び切るまで上げる「ジャーク」での記録)。元大関小錦の現役時の体重が275kg前後だったことを考えると、驚異的なパワーといえよう。
「Ironman Champion Chrissie Wellington Human Body Study 1213」 Howard Schatz
(Photograph by Howard Schatz from Schatz Images: 25 Years (Glitterati, Inc. 2015))
こうした人間の肉体の持つ力に着目し、躍動するアスリートの“肉体”を科学的な面からの分析やデータ、写真などでビジュアル化することで多面的に解剖するのが「アスリート展」なのだ。

最新の表現技術を応用した、目で見て、体感できる展覧会

本展は元アスリートの為末 大氏(写真上)、デザインエンジニアの緒方壽人氏(写真中)、人間の知覚能力に基づく新しい表現を研究・開発し、社会に提案している菅 俊一氏(写真下)の3名をディレクターに迎えている。
展示はモーションキャプチャーを使い、競技前のアスリートの鼓動を表現した「アスリートのダイナミズム」から始まり、様々な競技の最高記録をビジュアルで見せる「驚異の部屋」、疑似トレーニングを体感してアスリートに迫る「身体トレーニング」、プレッシャーやマインドコントロールなど内面の要素である「メンタルトレーニング」、普段見ることのできないアングルから撮影された写真作品を集めた「アスリートの写真」、拡張機能としてのスポーツギアを紹介する「身体拡張の道具」、先端技術によるデータ解析と戦術マネージメントを体感できる作品である「戦術における技術変化」というトピックに基づいた構成となっている。
「アスリートダイナミズム」 Takram/技術協力:高橋啓治郎
「Xiborg: 義足 / Genesis」 株式会社Xiborg
為末氏が「私にとってアスリートでいるということは、行為を行い極めるということでした。行為は自発的なものもありますが、相手選手に合わせたり、風や地面に合わせたりと、環境に対応することもあります」と語るように、スポーツの世界の勝負を決めるのは日々の練習の積み重ねが前提としてあり、そこへ思いもよらない出来事であったり、さらには試合前や試合中に起こることやシチュエーション、偶発性さえも柔軟に取り込める(もしくは撥ねつける)力が必要となる。その行為は自分だけではなく相手も、さらには場さえも支配するほどの強烈なエネルギーを放ち、スポーツを見る人に驚きと感動を与えてくれる。本展はアスリートの強烈なエネルギーとそれを支える技術を「目で見て、体感できる」展覧会なのだ。

生きている誰もが肉体を持ち、脳からの電気信号によって動きを筋肉へと伝達して、日々動作を繰り返しているが、アスリートの研ぎ澄まされた感性と肉体とはどんな違いがあるのか。ぜひ本展で確かめてほしい。

Photo: 「報道写真の視点」 Adam Pretty(Getty Images)(main)

Text by Tamotsu Narita