黒牛01
- 40男、至高のグルメガイド -

代々木の隠れ家「黒牛」の奇をてらわぬ本格焼肉

大人の男性なら、できれば人に教えたくない行きつけの店を持っておきたいもの。代々木に店を構える焼肉「黒牛」は、そんな大人の隠れ家のひとつだ。住宅街の地下に店を構えていることからも、肉の味だけで集客できる自信がうかがえるというもの。いつ来ても、いつでも間違いなく秀逸の焼肉を提供してくれる、まさに知る人ぞ知る名店なのである。

最上級の希少部位がいつでも堪能できる

螺旋の階段を地下に降りていく形となる、一見には入りにくいエントランス。もちろん、外から入り口は見えない。しかも、店内は黒を基調にした重厚なインテリアでまとめられ、照明もアンダー。清潔で焼肉特有のニオイもなく、高級フレンチと間違えたかと思う雰囲気だ。これは内装が目立ちすぎて気が散ることなく、ただただ肉に集中してほしいというこだわりの空間を意識したもの。黒一色は、女性の服を引き立てるし、スポットライトがさらにムードを高めてくれるはずだ。イスの座り心地もよく、隣と充分な間隔が保たれているので会話にも集中できる。平日は接待の利用も多い。無煙ロースターなので、視界を遮る排気ダクトもなく、洋服に臭いもつきにくい。女性を招待するには最適の焼肉店といえるだろう。

最上級の希少部位がいつでも堪能できる

炭火ではなく無煙ロースターなのは、肉の上質さゆえ。最上級の肉を最適な状態で食べてもらうには、ロースターがいいというこだわり。焼肉は最後の調理はセルフなので、上手く焼いて食べてほしいというオーナーの思いからだ。肉はあえて一頭買いではなく、部位別に肉質をひとつひとつ確認して仕入れる。料理長はこの道35年の肉のスペシャリスト。「肉は個体差がかならずあるもの。ブランドだから常にいいとは限らない」。その日の最高品質の部位を仕入れるので一頭買いより割高になるが、だからこそいつでも「黒牛」の感動が味わえるのだ。リピーターを「がっかりさせたくない」という。今日の感動が1カ月後も10年後に来店しても変わらず甦る。

最上級の黒タンが常時あることの凄さ

肉はもちろん黒毛和牛、こだわりのオスだ。最上級なので柔らかさは当然だが、脂に力がある。特筆したい特上ミスジ(6000円)は薄紅色で、焼くのをためらうほど美しい。とろけるように柔らかいだけではなく、クッという歯ざわりとしっかりした肉の味、サラッとした脂の甘い薫りが口中に広がる絶品だ。これだけを食べに来る客もいる。上品な味のつけダレにも技を感じる。

最上級の黒タンが常時あることの凄さ

タンは黒タン(上タン3000円)。超希少な最上級の黒毛和牛のタンを常時提供できる店は、実は少ない。業者にレベルを認められ、信頼されている良店の証だ。臭みがないのでレモンはつかない。キムチ(白菜475円)も自家製で、これがまた絶品。上質の唐辛子でなければこの味は出せない。コムタンや冷麺(各890円)のスープもダシからすべて手作り。飲み物はシャンパンやワインもあるが、珍しい国産無添加生マッコリ(白一文字 剣 2800円)をお勧めしたい。マッコリの概念が変わるはずだ。

「黒牛」が提供するのは創作焼肉ではなく、クラシックなメニュー。それだけに、純粋に「肉を食べたい」ときにこそ思い出してほしい店といえる。休日は家族連れも多く、思い出になる美味は記念日にも最適。高級寿司店に似た素材を活かす技と仕事を楽しむために「今日はミスジ」とひとつに絞って、何度か訪れてコンプリートするのもいい。誰を連れてきても、最高の時間を楽しんでもらえる、まさに「人には教えたくない店」なのである。

Text by Takako Funayama(Seidansha)