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セレブや富裕層を虜にする“ストリートロッド”の世界

アメリカのクルマ文化は独特で、特にカスタムカーにはヨーロッパ以上にさまざまなスタイルが存在し、ディープな世界を醸成している。たとえば、そんなカスタムカルチャーのひとつが、戦前車をベースに独自のボディワークやパワーアップなどのチューニングを施す「ホットロッド」だろう。しかし、近年、アメリカのセレブや富裕層の間では、このホットロッドをより洗練させたカスタムカルチャーが人気を集めている。それが、オンリーワンを求める大人のクルマ好きが行き着く贅沢な趣味「ストリートロッド」だ。

「ホットロッド」よりも街乗りに適したカスタムカルチャー「ストリートロッド」

ホットロッドの「ロッド」とは、エンジンの部品であるプッシュロッドやコンロッドなどのロッド類のことを指す。レースでエンジンを回せば、ロッド類はかなりの熱を持つ。これがホッドロッドの語源とされている。

ホットロッドは、世界初の量産型乗用車『フォード モデルT』の後を継いで1927年に登場した『モデルA』など、戦前に生まれたクルマのボディを使い、むき出しのV8エンジンとタイヤが特徴のワイルドなカスタマイズである。屋根を切って低くしたり、ボディに「フレームペイント」と呼ばれる火炎などのド派手なペイントを施したりするオーナーも多い。

その名称から、「ストリートロッド」もホットロッドの一部のように思われがちだが、じつは両者はまったくの別物だ。

「ストリートロッドが生まれたのは、ホットロッドが確立された後でした。レース由来のチューニングを行うのがホットロッドで、その流れを汲みつつ、街乗りに主眼を当てたものがストリートロッドだと考えるといいでしょう」。そう話すのは、愛知県でアメリカンカスタムカーの販売、制作等を行う「Hot Stuff(ホットスタッフ)」の山口念修さん。

ホットロッドは、普段使いを度外視しているために、公道走行には向かないチューニングが施されるケースが多い。一方、ストリートロッドでは、エンジンやブレーキなどに比較的扱いやすいものを使用し、実用性も考慮している。外観もド派手なカラーリングやステッカーは好まれない。

「ストリートロッドは、ホットロッドを街乗りに特化させているので、パワーのあるエンジンでも扱いやすく、乗り心地も良く作られています。ボディのペイントも、悪目立ちするファイヤーパターンなどは避け、インテリアもモダンで質の良い素材を使った『ラグジュアリーカスタム』というべきもの。ストリートロッドは、ホットロッドよりも一般社会との調和を考えたカスタム文化といえるでしょう」

「ホットロッド」よりも街乗りに適したカスタムカルチャー「ストリートロッド」
(C)Organized Chrome

(C)Paul Rioux

(C)Tomas Henriksson

古いクルマをベースに、オンリーワンの価値を生み出すのが「ストリートロッド」

ホットロッドとストリートロッドでは、ベース車両にも明確な違いがある。ホットロッドの場合、ベースとなるクルマは1927年に登場したフォード『Aモデル』が定番だ。カスタマイズが似合うクラシックでプレーンなスタイリングに加え、大量生産されたことにより現存数が多いからである。

「一方、ストリートロッドを好む人は、定番スタイルよりもオンリーワンを求めます。ここ10年ほどの傾向としては、かつてのリンカーンやグラハムなど、現在はなくなってしまった希少な小規模メーカーのボディラインが美しいモデルを使うことが多いですね。特に、当時の限定車のボディが発掘できれば、ストリートロッドの世界のなかでの存在感がぐんと増します」

とはいえ、戦前車ではなく、1970年代など比較的新しいモデルも十分ベースになり得る。ストリートロッドにはっきりとした「決まり事」はなく、「答え」もない。

「ストリートロッドとは、オーナー自身が作っていくもの。だから、どんな車種でもストリートロッドになり得るのです。強いて言えば、古いクルマを使って新しい価値を生み出していくのがストリートロッドといえるでしょう。しかし、そのスタイルもまた日々変化していきます」

アメリカには古いものを大切にする文化が根づいており、戦前車だからといって「旧車」や「クラシックカー」といったフィルターをかけない。現代のクルマと同等に扱うという。だからこそ、ストリートロッドにも次々と新しいスタイルが生まれていくわけだ。

「ただし、ひとつだけ決まりがあるとすれば、それはすべてがアメリカ製であるということ。アメリカ製のパーツを使い、アメリカでアメリカ人の手で作られるオンリーワン。それがストリートロッドというスタイルなのです」

古いクルマをベースに、オンリーワンの価値を生み出すのが「ストリートロッド」
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高級車やスーパーカーを所有するセレブや富裕層が「ストリートロッド」にハマる理由

このストリートロッドが西海岸のセレブや富裕層の趣味として人気になっているという。一般的にセレブや富裕層といえば、ロールス・ロイスやベントレー、メルセデス・ベンツ、フェラーリやランボルギーニなどを好むイメージがあるが、ストリートロッドも非常に人気が高いのだ。

「もちろん、セレブたちは超高級車やスーパーカーも所有していますが、ガレージにストリートロッドが並んでいることはめずらしくありません。自分自身が作り上げたストリートロッドは、彼らにとっても自慢の1台。フェラーリやランボルギーニだけではなく、世界に1台しかないオンリーワンのクルマも持っていたいのでしょう」

オンリーワンを求めれば、それ相応のコストもかかる。古いボディに最新の技術を使ったボディワークを施し、街乗りにも耐えられるパワートレインを移植する…。富裕層やセレブでなければ、現実的にストリートロッドを所有するのは難しいのだ。

もし、すでに何台もの高級車をガレージに並べ、次の1台を考えている人がいるなら、ストリートロッドを選択肢に入れてみるのもいいかもしれない。過去を甦らせ、自分の美意識にしたがってクルマを仕立て、オンリーワンの価値を創造する。まさに大人の男にこそふさわしい、贅沢な趣味といえるだろう。

高級車やスーパーカーを所有するセレブや富裕層が「ストリートロッド」にハマる理由
(C)Brad Harding

Text by Tetsuya Abe

Photo by (C)USautos98(main)