デトロイト美術館展を巡る
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ゴッホの名画「オワーズ川の岸辺、オーヴェールにて」を徹底解説

世界屈指のコレクションを誇るアメリカのデトロイト美術館の中でも名画と名高いゴッホの「オワーズ川の岸辺、オーヴェールにて」。先日初来日を果たしたこれらの所蔵品を雑誌「男の隠れ家」の特集「デトロイト美術館展を巡る 贅沢な午後」が詳細に解説している

ここに注目!

●ゴッホやドガを含む15点の日本初公開作品
●印象派から20世紀初頭までの名画が集結
●各作家がそれぞれ描いた自画像を比較できる

市民たちの手で守られた全米屈指のコレクション

デトロイト美術館はアメリカ合衆国ミシガン州デトロイトにある。言わずと知れた自動車産業の地である。1885年の創立当初はヨーロッパ古典絵画を収集していたのだが、産業の活況を受けて近代絵画の収集を進めていき、全米有数の美術館へと発展していった。

その頃のアメリカの美術館では、制作から一定の年数を経た、つまり評価の定まった作品のみ入手する規定が多かった。しかしデトロイト美術館にはその規定がない。だから斬新かつ大胆な表現を持つ同時代の作品も受け入れることができたのだ。アメリカ国内の公共美術館で初めて、ゴッホとマティスの作品を購入したのも同館なのであった。



フォード家、シェルダン家、フェリー家など、デトロイトの富裕な美術愛好家たちが多大な寄付をこの美術館に投じた。なかでも生前から絵画の寄贈を続け、亡くなった時はドガ、マネ、ルノワール、ゴッホ、セザンヌ、マティスなど550点を超える収集品と潤沢な基金を遺贈した近代美術収集家のロバート・タナヒルの果たした役割は大きい。本展でも半数にあたる26点の作品がタナヒルゆかりのものである。

やがて自動車業界は斜陽化し、デトロイト市は財政破綻する。市立であるデトロイト美術館の収蔵品を売却する案も出た。しかし市民や周辺自治体、企業、さらに日本の自動車関連産業からも多くの資金援助がなされ、一点の作品も手離すことなく存続をなしえたという。

美術を愛する人々によって発展し、守り抜かれた収集品はアメリカの宝といえる。年間約60万人の来館者を集める美術館へと成長した。

デトロイト美術館展で観られる!!
巨匠たちの名画

アメリカ屈指の工業都市デトロイトへ、大西洋を渡ってもたらされた、ヨーロッパ近代絵画の「顔」ともいえる名画の数々。
わけても本展で公開されるのは、すべて必見としたい作品ばかりだ。
この機会に見逃してはならない注目の作品をご紹介しよう。

グラジオラス

自然の光の中で移ろう印象を表現することにこだわり続けたモネによる、実に印象派らしい作品。鮮やかな色調の絵の具を短く厚いタッチで置いて、見る人の目の中で混色を起こさせる。赤やピンクの花々が咲き乱れ、白いチョウが飛び交う。描かれた場所は、パリ近郊のアルジャントゥイユで2軒目に借りた「駅の向かいにある緑の鎧戸がついたピンクの家」の庭。日傘を差した女性は妻のカミーユである。

City of Detroit Purchase
クロード・モネ
油彩/カンヴァス
55.9×82.6㎝ 1876年頃
デトロイト美術館蔵

楽屋の踊り子たち

パリ・オペラ座の楽屋で練習する踊り子は、ドガが幾度となく描いた題材だ。華やかな舞台よりも、舞台裏の雰囲気や踊り子の日常の動きが興味の中心だった。しかし一方、この絵は写実を追ってはいない。床の楽器は大きすぎ、左側から右奥の明るい窓へと視線を導く構図も意図的である。肉眼で見ると画面はかなり暗く、衣装と窓の白が一層引き立つ。
City of Detroit Purchase
エドガー・ドガ
油彩/カンヴァス
40.6×87.6cm 1879年頃
デトロイト美術館蔵

オワーズ川の岸辺、オーヴェールにて
(日本初公開)

耳切り事件と精神障害の発症を経て、ゴッホが行楽地オーヴェールに移ったのは1890年5月。美術愛好家でもあるガシェ医師の治療を受けるためだった。これは緑の濃淡に包まれた川辺の夏の情景。筆致は荒々しいが、水面や木々、空の表現など、細部まで十分に計算されているのがわかる。女性のドレスもふっくらと柔らかい。この絵を描いて間もない7月、ゴッホはピストル自殺を図り、その生涯を閉じる。
Bequest of Robert H. Tannahill
フィンセント・ファン・ゴッホ
油彩/カンヴァス
71.1×93.7㎝ 1890年
デトロイト美術館蔵