ポストSUV、「シューティングブレーク」に注目せよ
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ポストSUV、「シューティングブレーク」に注目せよ

ワゴンでありながら、「ロー&ロング」のクーペのような佇まい、スポーツカーさながらの走行性能…。近年、こうした独特の個性を持つ「シューティングブレーク」というクルマが北米や欧州の高級車市場で注目されている。メルセデス・ベンツ、フェラーリに続き、ポルシェやBMWもこのカテゴリに参入する予定だ。SUVが依然高い人気を集める高級車市場で、次のトレンドとなりそうな「シューティングブレーク」とはどのようなクルマなのか。

英国貴族が狩猟に使った2ドアクーペが由来

フランス車ではステーションワゴンを意味する「ブレーク」は、もともと19世紀の英国で生まれた言葉だ。若馬を調教するボディのないフレームだけの馬車を「ブレーク」と呼び、これに案内役や狩猟者である貴族のための座席を加え、猟犬や猟銃、獲物などを載せられるようにしたのがシューティングブレークの成り立ちである。

移動手段が馬車から自動車の時代になると、シューティングブレークも自動車へと転換が進み、高級クーペを改造してワゴンのようなラゲッジスペースをつけたモデルが登場。1960年代から1970年代には、アストン・マーチン「DB5」やジャガー「XJ-S」を元に、複数のコーチビルダーがシューティングブレークを作っていたこともあった。

最初から積載性を重視したステーションワゴンと違い、シューティングブレークは後から積載性を考えてワゴン化したクルマだ。さらに、ステーションワゴンにはないパワフルなエンジンとスポーツ性、富裕層をターゲットにしたラグジュアリー性なども、シューティングブレークの特徴といえるだろう。

代表的モデルはメルセデス・ベンツ「CLSシューティングブレーク」とフェラーリ「FF」

現在、自動車メーカーが「シューティングブレーク」として販売しているのは、メルセデス・ベンツ「CLAシューティングブレーク」、その上位モデルである「CLSシューティングブレーク」、そしてフェラーリ「FF」の3モデル。

なかでも、「クーペの美しいスタイリング」と「高い利便性」を見事に融合させているのが、4ドアクーペのメルセデス・ベンツ「CLS」をベースにした「CLSシューティングブレーク」だ。メルセデス・ベンツには、CクラスやEクラスにステーションワゴンがラインナップされるが、見ての通り、CLSシューティングブレークのロー&ロングのボディは、それらのモデルとはひと味違う。

日本で販売されるCLSシューティングブレークは、2.0Lのディーゼルターボを搭載する「CLS220d シューティングブレーク」から、最高585psを発揮するV8エンジンを搭載したメルセデスAMG「CLS63 S 4MATIC シューティングブレーク」まで4タイプ。スポーティでありながら、通常でも590L、最大1550Lという高い積載性を併せ持つ。
ブランド初の4WD、4人乗りの「FF」は、フェラーリであることを考えると異色のモデル。しかし、FFの3ドアハッチバックというスタイルは、2ドアクーペから発展したシューティングブレークとしては本流だ。

「488GTB」ならエンジンがあるはずのリアハッチを開けると、そこに広がるのは450Lのトランクスペース。リアシートを畳めば、荷室は最大800Lまで拡大可能だ。高い機能性を持つだけではなく、フロントミッドに搭載されたV12エンジンは、このクルマが本物のスポーツカーだということを証明している。

スーパーカーに機能性を追加するという欲張りな考え方は、ステーションワゴンともSUVとも異なるシューティングブレークならではのもの。このコンセプトに答えを見出したフェラーリは2016年、「FF」の後継としてさらに実用性と走りを高めた「GTC4ルッソ」を発表している。

ポルシェ「パナメーラ」やBMW「6シリーズ」もシューティングブレーク市場に新モデル投入

メルセデス・ベンツCLSシューティングブレークやフェラーリFFが開拓した新たな市場に参入すべく、欧州のライバルメーカーもシューティングブレークを開発中だ。

たとえば、すでに2012年、「パナメーラ・スポーツ・ツーリスモ」というシューティングブレークのコンセプトモデル(下の写真)を発表しているポルシェは、フル4シーターの4ドアセダン「パナメーラ」のラインナップに間もなくシューティングブレークを追加するという。
BMWも、ラグジュアリースポーツクーペ「6シリーズ」のラインナップにシューティングブレークを追加予定だ。海外メディアの報道によれば、リリースは2017年ともいわれる。これが実現すると、現在はライバルが存在しないメルセデス・ベンツGLSシューティングブレークと直接対決することになる。さらに、同じドイツの高級車ブランド、アウディも「オールロード・シューティングブレーク」というコンセプトモデルを発表済みだ。

欧州の高級車ブランドがシューティングブレークを市場に投入するのは、SUV、ファストバックともまた違う、新しい価値観を提案する意味合いが強い。現在トレンドとなっているSUVも、機能性とともにスポーツ性が年々向上し、本物のスポーツカーを凌ぐスペックを与えられたモデルが多くなった。北米、欧州だけではなく、中国などの新興市場に向けて、各自動車メーカーには新しいスタイルを提案していく必要があるのだ。シューティングブレークがSUVに続く高級車市場のトレンドとなるのかどうか、要注目である。

Text by Tetsuya Abe