現代に蘇る伝説のオートバイ、BMW「R5オマージュ」
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現代に蘇る伝説のオートバイ、BMW「R5オマージュ」

クルマだけではなく、オートバイの世界も、トラクションコントロール、ABS、電子制御サスペンションなどハイテク化が進んでいるが、その一方、最近のトレンドとなっているのが古き良きスタイルを前面に押し出したヘリテージモデルである。2016年5月にイタリア・コモ湖畔で開催されたコンクールイベント「コンコルソ デレガンツァ ヴィラ デステ」では、BMWモトラッドが80年前に誕生した往年の名車をかたどったコンセプトモデルを発表した。その名も「R5オマージュ・コンセプト」だ。

戦前のBMWモトラッドの最高傑作のオマージュ

「R」の名は、BMWモトラッドでは基幹となるモデルに与えられる。戦前から現代まで続く息の長いシリーズで、最大の特徴は車体の左右にシリンダーヘッドが飛び出したボクサーツインエンジン。なかでも、「R5」は1936年の登場以来、1950年代までBMWモトラッドのランドマークとして、世界中のオートバイにも影響を与えた名車だ。戦前のBMWモトラッドの最高傑作ともいわれている。

軽量なアルミ合金製シリンダーブロックを採用した新設計の500ccボクサーツインエンジンを搭載し、最高速度は135km/h。現在のオートバイと比べると物足りないが、当時はレースマシンとしても使用されるなど、時代の最先端を行く高性能マシンだった。とくに、その車体の美しさ、エレガントさは多くのファンを魅了した。

「R5オマージュ」はその名の通り、このR5に捧げるオマージュとして、誕生80周年の節目に製作されたコンセプトモデルなのだ。

エンジン以外のすべてのパーツを手作りで再現

R5オマージュはエンジン以外のほぼすべての部分を一から製作したワンオフモデルだ。しかも、この1台のコンセプトモデルのために、わざわざ新設計したものだという。

オリジナルモデルのディティールを再現しつつ、ひとつ一つのパーツを丹念に作り上げ、タンクは塗装に至るまですべて手作り。ブレーキレバーもアルミ削り出しで作られているほどのこだわりようである。
なによりも、目を惹くのはボクサーツインエンジンの美しさだ。この心臓部は、オリジナルモデルのエンジンをベースにリビルドしたもので、クランクケースカバーやギアボックスカバー、シリンダーヘッドは新たに削り出し、ポリッシュ仕上げを施した。

古い“発動機”ではあるものの、緻密な計算によって完成されている現代のオートバイのエンジンと違い、どこか温かみがあり、見ていて飽きることがない。極めつきとして、新たにスーパーチャージャーが搭載されているのがユニークだ。どれほどパフォーマンスが向上しているのか、実際に試してみたい気分にさせられる。

カスタムというより新型モデルに近い完成度

R5オマージュの製作チームを率いたのは、BMWモトラッドのチーフデザイナー、エドガーハインリッヒ。ブランドを知り尽くしているだけに、スポークやネジを見ても、その1本1本が視覚的にも機能的にも生きており、それらが総体となってシンプルな車体からなんともいえない魅力が滲み出ている。

剥き出しのタイヤ、剥き出しのフレーム、そしてエンジン。なにひとつ飾り気がないのに、これほど見入ってしまうオートバイは滅多にあるものではない。R5オマージュには、車体全体のまとまり感にいびつなところがまるでなく、その完成度は、カスタムというより新型モデルに近い。多くのオートバイメーカーが既存モデルをベースにヘリテージを製作するなかで、まったく新たにR5オマージュのような1台を作り上げた意味は大きい。
いまのところ市販される予定はないが、BMWモトラッドは2015年、「R nineT」のスクランブラーコンセプトを発表した後、このモデルを市販化している。もしかすると、R5オマージュにもその可能性があるかもしれない。

Text by Tetsuya Abe