男の隠れ家7月号_梅のふるさと を訪ねる
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世界農業遺産 和歌山 みなべ・田辺 梅のふるさとを訪ねる

国内随一の梅の産地として名高い和歌山県
みなべ・田辺地域が世界農業遺産に認定された。
登録名は「みなべ・田辺の梅システム」。
歴史の中で培われた伝統的農業、
農村文化、農業景観が世界に認められたのだ。
その価値をいま一度見詰め直す。

撮影◎遠藤純
文◎仲武一郎

時代を超えて受け継がれる美しい里山景観と梅文化

紀州石神田辺梅林を大蛇峰の展望台から望む。江戸時代からほぼ変わらず続く光景だ。写真左下には石神集落が見える。

急峻な山肌に開かれた一目三十万本の梅林

里山は新緑に輝いていた。急峻(きゅうしゅん)な山肌は一面の梅林だ。紀州田辺観梅協会の会長・石神忠夫さんと共に坂道を登って行く。ご自身も梅農家だという石神さんの足取りは軽い。会話しながらでは息が切れてしまうほどの速さだ。
2月、梅の花が一斉に花開く。梅林には多くの花見客が訪れる。

 

紀州石神田辺梅林(きしゅういしがみたなべばいりん)は、その広大さから「一目三十万本」とうたわれ、みなべ・田辺地域を代表する梅林のひとつだ。田辺市街地から会津川の流れに沿って景勝地として知られる奇絶峡(きぜつきょう)へと向かい、そこからさらに15分ほど車を走らせた山間に広がる里山である。2月の観梅期になると梅林は無料で開放され、多くの花見客で賑わう。

石神さんに案内され、標高400mの大蛇峰(おおじゃみね)へと登った。展望台から望む景色は雄大そのもので、すり鉢状の地形の底の石神集落を取り囲むように梅林が広がり、はるか太平洋まで遠望できる。
6月、梅の収穫の様子。梅の木の下にネットを張り、完熟して落ちてくる実を傷を付けないようにそっと受け止める。


当地が世界農業遺産「みなべ・田辺の梅システム」として認定されたのは昨年12月のことだ。

ご存じのように和歌山県は梅の一大産地だが、その中でもみなべ・田辺地域は国内生産の約50%を占めるほどの生産量を誇る。最高級品種として名高い「南高梅(なんこううめ)」の生まれ故郷でもある。その名は当地の南部(みなべ)高校(南高)とのゆかりから命名されたものだ。

みなべ・田辺地域では梅の加工も盛んだ。日本人に馴染み深いのはやはり梅干しだろう。最近では健康に配慮した低塩梅干しや梅の成分を生かした健康食品が現代人の食生活に取り入れられている。
自然を大切にしたこの地域の生産活動が、人々の暮らしを支え、一方で独特の美しい景観を形成しながら独自の梅文化を育んできた。

「この梅林の斜面は平均約30度、場所によっては約40度の場所もあります。それが機械化を阻み、伝統的な農業が受け継がれました。またそれゆえに、人々は健康や食生活にも気をつけています」と石神さん。江戸時代から高品質な梅を作り続けてきた農業システム、それが世界農業遺産「みなべ・田辺の梅システム」なのだ。