ボルボが提案する「助手席レス」というコンセプト
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ボルボが提案する「助手席レス」というコンセプト

「リムジン」とは、一般的にアメリカ車をストレッチしたバスのように長いセダン、あるいは、メルセデス・ベンツ「Sクラス」などに設定されるロングボディのモデルを指す。オーナーの多くはショーファー(運転手)付きで移動する企業幹部などの富裕層だ。しかし、リムジンを「後席の快適性を向上させたショーファードリブン」と考えれば、必ずしも長いボディを必要としないのではないだろうか? この問いに対してボルボが導き出した回答が、「助手席レス」というコンセプトである。

リムジン並のラグジュアリーな車内空間を演出

ボルボは2016年4月の北京モーターショーで、フラッグシップセダン「S90」の助手席を取り払い、代わりにオットマン(足乗せ台)となる「ラウンジコンソール」を設置したインテリアのコンセプトモデルを発表した。これは、助手席を取り払うことで、ボディやホイールベースを延長せずにリムジン並の広大でラグジュアリーな車内空間を創り出すというものである。

ボルボは、2015年にもラグジュアリーSUV「XC90」のトップグレード「エクセレンス」向けに後席の機能や快適性を高めた同様のインテリアを発表している(下の写真)。それをさらに発展させ、シーン別に数種類のモードを用意したのが今回の車内空間コンセプトだ。

至れり尽くせりの豪華装備の「助手席レス」

たとえば、仕事をしたいときには、格納式の17インチメディアスクリーンとテーブルを使い、移動中でもモバイルワーキングが可能だ。このスクリーンは動画のストリーミング再生も行えるので、映画やミュージックビデオなど、好きなコンテンツを愉しむことができる。

もっとリラックスしたいときは、後席がリクライニング式のマッサージチェアとなる。マッサージ機能の操作は手元のタッチパネルで行い、ヒーター付きのフットサポートでさらに贅沢な気分を堪能できる。

ラウンジコンソールは、ジュエリーやアクセサリー、メイクアップ道具を収納するストレージトレーともなり、左右のアームレストには小型の冷蔵庫が内蔵され、ボトルとグラスホルダーも装備されている。ちなみに、グラスはボルボの生まれ故郷、スウェーデンのクリスタルガラス・メーカー「オレフォス」製のものだ。

悪目立ちしないためにセキュリティ面も安心

いまから40年近く前、自動車メーカーとして初めてチャイルドシートを後ろ向きに装着したのがボルボだった。リヤシートに格納式のチャイルドシートを最初に内蔵したのもボルボで、ラウンジコンソールの部分にチャイルドシートを組み込んだ「エクセレンス・チャイルドシート」も発表している(下の写真)。

回転とスライドが可能なチャイルドシートを後席と向かい合うように組み込むことで、助手席のドアから乳幼児をスムーズに乗り降りさせることができ、向かい合わせなのでコミュニケーションも取りやすいのだ。
こうしたイノベーティブなアイディアが生まれるのは、風通しの良い組織的土壌もあるが、一番大きいのは、ボルボが「人を中心とした設計」を信条としているためだろう。

「助手席レス」も、後席で移動することの多い富裕層の安全や快適さを追求することで生まれたコンセプトだ。富裕層には、大げさなリムジンには乗りたくないという人もいる。長いボディのリムジンは悪目立ちするため、セキュリティ面で心配が残るのである。しかし、ボディサイズが変わらないリムジンならあまり目立たず、安全性も向上する。本当のVIPは、目立つクルマには乗らないものだ。

導入時期は未定だが、富裕層にとって、このコンセプトが歓迎すべきものであるのはたしかだろう。もしかすると将来、ラグジュアリーカーは「助手席レス」の3シートが常識となる日が来るかもしれない。

Text by Muneyoshi Kitani