広尾の隠れ家でスプリングラムと熟成肉を堪能する
- 40男、至高のグルメガイド -

広尾の隠れ家でスプリングラムと熟成肉を堪能する

40男なら、一人でさくっと立ち寄れるカジュアルな店や、仲間とワイワイ楽しめるアメリカンな大箱、接待にも使えるシックな高級店など、ステーキハウスのカードは何枚か持っておきたいもの。そのどこにも当てはまらない、とにかくうまい肉をシンプルに、ゆっくりと堪能できるありそうでなかった店が、6月18日に一周年を迎える広尾のモダンチョップハウス、RUSTEAKS(ラステイクス)だ。オーナーは、ニュージーランド産の熟成肉とワインで人気を集める「WAKANUI GRILL DINING TOKYO(ワカヌイ グリル ダイニング 東京)」でジェネラルマネージャーを務めていた加藤良介氏。店名は、RUSTIC(素朴な、田舎の)とSTEAKS(ステーキ)からなる造語。「肉本来の旨味をシンプルに味わってほしい」という、加藤氏の願いと自信が込められている。

肉のプロフェッショナルが辿り着いた熟成法

大人のための美食エリア、広尾と恵比寿のちょうど中間あたり。明治通りに面したビルの階段を降りると、地下一階にRUTEAKSがある。まず目に飛び込んでくるのは無駄を削ぎ落とした熟成庫だ。熟成されているアメリカのプライムビーフは白いサラシで巻かれ、断面が手前に並べられている。シェフが独自に培養した熟成菌が庫内で繁殖し、肉のタンパク質を食べてアミノ酸に分解するため、旨味成分が増して肉質が柔らかくなるのだという。また、チーズのような熟成香もしっかりと放っている。熟成日数は最低28日間。オーダーを受けたときに28日目のものが売り切れていた場合は、27日目のものがあっても欠品するという徹底ぶりだ。サラシも、熟成日数も、菌も、肉のプロたちが研究に研究を重ねた結果、辿り着いた方程式だという。
シグネチャーメニューは、古巣の名前を冠した「“ワカヌイ”スプリングラムラック(ハーフ2400円/フル4800円)」。ニュージーランド産の6カ月もののベイビーラムに、備長炭でゆっくりと火を入れる。ピンク色でふくよかなルックも、肉汁がジューシーな口当たりもとにかくソフト。春先の良質な草だけを食べているので、特有のラム臭はなく、そのミルキーな風味に驚くこと間違いなし。食べ始めはナイフを入れながら、ラストは骨にむしゃぶりつくのが正解だ。
ビーフなら、「グラスフェッドビーフテンダーロイン“ラスティクススタイル”(250g 3800円/500g 7400円)を。これはいわゆるフィレ肉で、澄ましバターを敷いているのがラスティクススタイルだ。熟成肉のグリルは、アメリカ産牛肉の「骨付きサーロイン プライムグレード(600g 6900円)」「ポーターハウス プライムグレード(800g 13800円)」「リブアイ プライムグレード(100g 1400円 ※オーダーは300g〜)」の3種類。すべて最高級のプライムグレードだ。
男女2人の場合、メインのグリルはラムを軸に、好みのビーフを組み合わせる2品がオーダーの目安。ラムとテンダーロインは非常に優しい肉なので、リブアイ300gをプラスしてメインを3品平らげるカップルもいるという。すべてのグリル料理は、キッチンでの塩コショウはミニマムに抑え、卓上の塩コショウでそれぞれの好みで仕上げて食べるスタイルだ。余計な味付けをしない引き算の勝負は、肉に自信がある証拠だろう。

ニューワールドのボトルワインと過ごす至福の肉時間

肉料理に比べると前菜やサイドメニューがそこそこ止まりのステーキハウスが少なくないが、RUSTEAKSは妥協しない。前菜の「本日のオイスター(1P 480円)」は、国外からその時季に応じて産地を使い分けてベストなものを提供する。また、「家庭で食べられる料理では意味がない」という加藤氏のモットーのもと、「サーモンの冷製とオニオンアイスクリーム 九平次に漬け込んだイクラ添え(1500円)」など、メニュー名からして手のかけ具合がわかるものだけでなく、「ポテトフライ(600円)」や「パクチーサラダ(900円)」など、シンプルなメニュー名のものも、家庭料理や他店とは一線を画する仕事が施されている。
ワインはいい意味でこだわりをもたず、アメリカワインを中心に、フランスワインやオーストラリアワインを幅広くラインナップ(グラス900円〜/ボトル5000円〜)。ニュージーランドの肉にはやはり、同じ土壌からつくられるニュージーランドのワインが好相性だ。グラスシャンパン(1500円)で乾杯し、オイスターには白ワインのグラス、そして赤ワインのボトルに移行するのが王道パターンだ。

客層は、ビジネスユース4〜5割、カップル3割、それ以外は家族や友だち同士など。本質を大切に余計なものを省いたミニマルでシンプルな料理とサービスが提供されるRUSTEAKSでは、飾らず気取らず、気の置けない相手と本能の赴くままに肉を味わい尽くすべし。「肉が食べたい」と思っただけのなんてことない日を、その肉のうまさで特別な日に変える実力店は、予約困難な店になる前にトライする価値がある。

Text by Kazumi Kera