BMW史上最速、公道を走るレーシングカー「M4 GTS」
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BMW史上最速、公道を走るレーシングカー「M4 GTS」

東京モーターショー2016でワールドプレミアを果たしたBMW「M4 GTS」が、ついに販売を開始した。BMW M社のレーシングテクノロジーを集約して作られた究極のM4は、出力を500psにまでアップ、2シーター化するなど徹底的に軽量化が施された「公道を走るレーシングカー」ともいえるモデルだ。生産台数は世界限定700台、日本にはわずか30台だけしか輸入されない希少な1台である。

伝説の“M3”生誕30周年を記念した特別モデル

クルマ好きなら、BMW「M3」という名前を聞いたことがあるはずだ。1986年の登場以来、ファンの心をつかんで離さないBMW随一のドライビングマシンである。現行モデルから3シリーズ・クーペが「4シリーズ」と名前を変えたため、M3は「M4」と呼ばれるようになったが、クルマの本質は変わっていない。

M4 GTSは、このM3の生誕30周年を記念したスペシャルモデルだ。BMWによると、「BMW M社による革新的なモーター・スポーツ・テクノロジーを集約したレース仕様のモデルであるが、公道も走行できることが大きな特徴」だという。つまり、M4 GTSは、たんにパフォーマンスを高めただけのクーペではなく、公道も走れるレーシングカーなのだ。

ロールバーと6点式シートベルトも標準装備

エクステリアで目につくのは、リヤの大きなウィング。角度調整式で、素材はCFRPが用いられている。このほか、リヤディフューザーとアシッド・オレンジにペイントされたフロントスプリッタもCFRP製の専用品だ。ホイールはフロント19インチ、リヤ20インチで、専用のミシュラン・パイロット・スポーツ・カップ2タイヤを標準で履く。

ボディカラーはBMWの定番「アルピン・ホワイト」と、マットな質感を持つオプションカラーの「フローズン・グレー・メタリック」の2色が用意された。有機LEDのテールランプを採用したのは、量産モデルとして世界初だ。
インパネやシートにアルカンターラが用いられたインテリアも、レーシーに仕上げられている。インパネは形状こそノーマルのM4と変わらないが、センターコンソールやハンドブレーキレバーは重量の最適化が図られ、サイドパネルは軽量素材により標準車比で50%もの重量低減を実現している。ドアを閉めるときに引くのは、グリップではなくループ式のストラップだ。

シートは専用設計のCFRP製バケットタイプを採用。さらに、日本仕様には「クラブスポーツ・パッケージ」が導入されるため、エクステリアパーツと同じアシッド・オレンジに塗られたロールバー、「公道使用不可」の6点式シートベルトまで装備される。座った瞬間から「その気にさせる」内装といっていいだろう。

ニュルブルクリンクでポルシェ“カレラGT”と同タイムを記録

要となる「走り」の部分を見ると、エンジンは標準車と同じ3.0L・Mツインパワー・ターボエンジン。霧状の水をシリンダー内に直接噴射して冷却を行う「ウォーター・インジェクション・システム」の採用もあって、よりブーストを高めることができ、その結果、317 kW (431 ps)だった最高出力は368 kW(500 ps)にまで向上。最大トルクは、50Nm(5.1kgm)アップの600Nm(61.2kgm)だ。

組み合わされるトランスミッションは、Mモデルの高回転エンジン向けに専用設計された「7速 M DCT Drivelogic(ダブル・クラッチ・トランスミッション)」。ダンパーとスプリングが一体で設計された「Mコイルオーバー・サスペンション」や専用タイヤの採用も相まって、ニュルブルクリンク北コースを7分28秒で駆け抜ける。ちなみに、7分28秒というタイムは、600psオーバーのスーパーカー、ポルシェ「カレラGT」と同じ記録だ。もちろん、市販モデルのBMWとして最速となる。
まさに史上最強のMモデルだが、「公道も走れるレーシングカー」とは、公道をレーシングカーのように走るということではない。多くの人たちはきっと、ノーマルのM4でも満足できるはず。大切なのは、パフォーマンスだけではなく、レーシングカーに限りなく近いクルマだからこそ感じることのできる、フィーリングや音、妙味や趣きである。「M4 GTS」の価格は1950万円。全世界で限定700台が生産され、このうち日本に導入されるのは30台のみ。最強のM4を味わいたい人は急いだほうがよさそうだ。

Text by Muneyoshi Kitani