贅沢で実用的な4人乗りフェラーリ『GTC4Lusso』
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贅沢で実用的な4人乗りフェラーリ『GTC4Lusso』

2016年3月1日。ジュネーブモーターショーの一角に人だかりができた。場所はフェラーリブース。視線の先には赤いベールに覆われた1台の車が鎮座している。11時45分、おもむろにベールが取り除かれると、フラッシュの嵐と感嘆の声が入り交じる。『フェラーリGTC4Lusso(ルッソ)』がデビューした瞬間だ。

大人4人がゆったりと乗ることができる室内

『GTC4Lusso』は、4シーターの4輪駆動モデルである『FF』を刷新して、車名を変更したモデルだ。「GT」はグランツーリズモ、「C」はクーペ、そして「4」は4シーターを意味するといわれている。ちなみに「Lusso」とはイタリア語で「贅沢」を意味する。

『GTC4』という名称を耳にしたとき、多くのフェラーリファンが思い出したのは、伝説の名車『330GTC4』だろう。エンツォ・フェラーリが愛した『330GTC』の2+2モデルである。『GTC』の名は、1960〜70年代に送り出されたラグジュアリーGTに授けられた。その名を現代に復活させたのが、『GTC4Lusso』だ。
4人乗車なので、室内は、十分なスペースと快適性を備える。しかし、外観はリアに向かって流れるように細くなる絞り込とルーフ後端を低く落としたリアスタイリングで、ファストバックスタイルを実現。スポーツ性を強く押し出しており、4シーターとは思えない流麗なフォルムだ。もちろん、フェラーリを象徴するツインテールライトは健在である。

コックピットは、センターデバイスによって仕切られたシンメトリックなデザイン。運転手だけでなく、同乗者もドライビングエクスペアリエンスを共有することができる。インテリアは、スポーティでありながらラグジュアリーさを兼ね備える、近未来的な雰囲気が印象的だ。

荒馬ではなく、思い通りに駆けめぐる駿馬

心臓部は、フェラーリの象徴ともいえる自然吸気のV12エンジン。排気量は6262ccだ。最高出力は690ps/8000rpm。最大トルクは697Nm/5750rpm。最大トルクの8割を1750rpmから発生させ、低回転域でも鋭いレスポンスを実現した。このモンスターエンジンから叩き出されるのは、0-100km/hまで3.4秒といった猛烈な加速力と最高速度355km/hといった脅威の動力性能だ。

ひと昔前のフェラーリなら、このような荒馬を乗りこなすには相応のテクニックを求められただろう。しかし、最新のフェラーリは荒馬ではなく、まさに思い通りに駆けめぐる駿馬だ。それを実現したのが、フェラーリ独自の4輪駆動システム「4RM Evoシステム」に後輪操舵機能を統合した「4RM-S(4輪駆動、4輪操舵)システム」である。

乾燥したハイグリップ路では、俊敏さはもちろん、精密性と安定性からコーナリングスピードが向上。また、雪道や濡れた路面といったローグリップ路でも、優れたドライバリティと確実な車両コントロールが可能となった。これは、卓越したドライビングスキルがなくとも、誰しもが『GTC4Lusso』の性能を引き出すことができるということ。これも、ある意味「実用的」なフェラーリであるために重要なポイントだ。

高速走行時は高音で、市街地では心地よい音色

長距離を走るGTカーにとって、運転のしやすさとともに重要なことが室内の静粛性である。そこで、『GTC4Lusso』は優れた遮音システムを採用。シャーシとボディの接合部の剛性強化やエアコンの静粛性向上、そして、音響特性に配慮した最新素材による不快な周波数帯域のフィルタリングとダンピングによって、静粛性を向上させた。

結果として、ノイズは除きつつもフェラーリ特有のエグゾーストノートが損なわれず、高速走行時には高音でパワフルな、市街地でのクルージングでは控えめながら耳に心地よい音色を奏でてくれる。

市街地走行からショートドライブ、長距離旅行、そして雪に覆われたワインディングまで、快適でエキサイティングな走りを実現する『GTC4Lusso』は、おそらく、フェラーリのラインナップのなかで、最も実用的な1台だ。一方で、本能に語りかけるフェラーリならではの官能的なハンドリング、エキゾーストノートも健在。ドライバーだけでなく、搭乗者全員を優雅でありながら、高揚した気分へと誘ってくれるだろう。

Text by Tsukasa Sasabayashi