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「分権的事業部制」を研究し現代的大組織の源流を探ったチャンドラー

管理職やリーダーといった立場で、経営方針の下、部下や予算と言った組織と権限を持って目標を達成していくという責任ある仕事をしている方も多いだろう。この権限・組織という概念、実は当たり前ではなく、最近築き上げられ定着した概念なのだ。今回はその源流をチャンドラーの研究に見る。

現代の当たり前の仕事の仕方は実は最近のもの

管理職やリーダーといった立場で、マネジメントをしながら目標を達成していく管理職。この権限・組織という概念を、経営学的には「分権的事業部制」と言うが、今やあまりに当たり前のこの概念、実は1800年代中頃に発達した近代的思想であるという事を知っている方は少ないだろう。

ファミリービジネスから大企業へ

当初企業は経営者と少数の雇用者、つまりファミリービジネスの様なものから始まった。農業・漁業と言った第一次産業にこの形態が多いことから容易にイメージできる。

アルフレッド・デュポン・チャンドラー Jr.(Alfred DuPont Chandler, Jr./以下、チャンドラー)は、そういった原始的な組織形態から現代的な大企業の形態が生まれていく過程である1840〜1850年代を研究した。

人類史において組織とはかなりの期間この小規模なファミリービジネスだった。製品の輸送と言っても飛脚や馬で運べるような、少量・軽量な物が殆どであった。しかし1840年代から石炭による蒸気機関で鉄道を走らせる事が可能になり、製品の輸送が普及し始めた。

そこで問題が起きる。鉄道は地理的に長い距離を扱うビジネスのため、ファミリービジネスのような組織では管理できない。なぜなら社長の決裁をとろうにも、社長は線路の100km先にいるのだ。結果、地域毎に権限を分け、そこに雇われの管理者を設置することとなった。これが「分権的事業部制」で、ここから組織をどう設計・運営するか人事はどうするかといった問題「マネジメント」の必要が始まった。

ファミリービジネスから大企業へ

マネジメント、チャンドラーの「見える手」は、私達の手でもある

チャンドラーは分権的事業部制の誕生によって必要になったマネジメントを見える手と呼んだ。アダム・スミスが市場・マーケットを「神の見えざる手」としたのと対比した言葉だ。つまり組織とはマネジメントによってコントロールできる事を意味している。

チャンドラーはこの鉄道の事例以外にも、電信や水上交通などインフラの発展に伴う社会の変化を研究したが、本コラムの読者にとって学びとなるのは、インフラが変われば必要なマネジメントも変わると言うことだ。皆様が生きるこの時代はインターネットが普及していく過程そのものである。つまり、これまでのマネジメントとこれからのマネジメントが切り替わる狭間に生きていると言うことだ。日々マネジメントに向かい合って悩んでいる皆様は、時代を創っているという事なのだ。

マネジメントを通じ時代の変化を乗り越えたデュポン

勘の良い読者なら気づいたかも知れない、チャンドラーのフルネームにデュポンとあるが、これはテフロン加工で有名な大手化学メーカーのデュポンである。チャンドラーは(当然)デュポンを深く研究した。実はデュポン社自身も創業一族に権限が集中するファミリービジネスであったのが、第一次世界大戦以降の多角化戦略の必要性から「分権的事業部制」に移行し生き残った企業だ。チャンドラーの著書やデュポンの社史は、マネジメントに悩む皆様にとって学ぶべき歴史の事実であり古典である。