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松下幸之助の凄さをビジネスの観点から振り返る

松下幸之助の偉大さの説明が今更必要な日本人はいないだろう。ではビジネス界において何が偉大だったのか。幸之助が生涯取り組んだ倫理・教育など公共的にな成果に隠れビジネスに絞った議論は意外とされていない。今回は幸之助のビジネスにおけるエピソードから、その経営スタイルを考えてみる。

偉大すぎて姿が捉えにくい松下幸之助

松下幸之助(以下、幸之助)を知らない日本人はいないだろう。パナソニックという世界的大企業の創業者であると共に、松下政経塾・PHP研究所などを通じて幅広い影響を残している。本コラムの読者だとつい旧社名で松下電器産業と呼んでしまう方も多いだろう。松下の名は我々の心に深く根ざしている。
そんな松下幸之助だが、感動的なエピソードや心を掴む言葉が数多くあることもあり、逆にビジネス観点からの功績が見えにくくなっているようにも感じる。そこで今回は松下幸之助を一歩引いて捉えてみよう。

時代に20年先駆けた幸之助の「週休二日制」導入はアメかムチか

松下幸之助が世間に先駆けた事は数多いが、「週休二日制」の導入は圧倒的であった。世間が昭和55年から、官公庁が平成四年からという週休二日だが、なんと松下電器は昭和40年(昭和35年に導入決定)である。
生産性の向上が導入目的で、きっかけは米国視察。「米国では週に2日休むにもかかわらず日本の10倍給料を払っている。それでも会社はもうけている。1人当たりの生産量が10倍だからだ」と述べている。導入後は生産性の改善に猛烈なプレッシャーをかけた。
面白いのが、単に能率を上げるための施策をして週6日働くのではなく、週1日(土曜日)の休暇を追加したことだ。幸之助は「1日休養、1日教養」としたが、労働者として見たら、プレッシャーが高まりながらも休みが増えた事は喜ばしい。アメとムチを上手く活用して総合的な生産力を入手したとも言える。

幸之助の「解雇してはならぬ」を振り返る

幸之助の有名な言葉に、世界大恐慌への対応を指示した、「従業員は1人も解雇してはならぬ。給与も全額支給する。その代わり生産は即日半減させ、店員は休日返上で全力をあげ倉庫の品の販売に努力すべし」がある。この言葉が余りに有名で幸之助は従業員の解雇をしたことがないように思われているが、実際は解雇をしたことはある。注目すべきはこの発言時の社会状況。他社ではリストラ・賃金カットが吹き荒れ、いよいよ松下も、という時だったのだ。松下でも当然従業員の解雇があるだろうと(従業員自身にも)思われていたときにこの発言があったので大きな衝撃が走った。結果社員が奮起し危機を乗り切ったのだが、この発言よく見ると不思議なのは、店員はなぜか休日も働かされて損することになっている。最初から厳しいので休日返上しましょうと言っては危機を乗り切る組織力は生まれなかっただろう。一時の損得を忘れさせるぐらいの衝撃を生むタイミングでこの発言はされたのだ。

劇場型経営で人心を掌握しビジネスを成功に導いた幸之助

これら事例のように幸之助のエピソードは常に社員や周囲の人の心を掴み結果を生み出してきた。注目すべき点は、幸之助のエピソードには衝撃が増幅する舞台装置が整っている事だ。これは意図的か天性のものかは分からないが、結果として劇場型経営者であった。考えてみれば、他のビジネス偉人と比べ、残されている幸之助のエピソードや言葉は非常に多い。
読者の皆様の中にも大規模な組織をどうまとめるか悩んでおられる方が多いだろうが、幸之助的な劇場型の演出を狙ってみるのはいかがだろうか。