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- ビジネス偉人に学ぶ -

ピーター・ドラッカーの提言。「知識労働者」とは何か

スマートフォンの普及に伴い、短く読みやすいコンテンツが増える一方だ。だが、内容まで軽薄になってしまってはいただけない。 そこで、仕事に役立ちながらも短く読みやすい、「ビジネス界における偉人の古典」を振り返るのが本企画。今回はおそらく日本で最も有名な経営学者ピーター・ドラッカーが提言した「知識労働者」を紹介する。

ピーター・ドラッカーが語る「知識労働者」

ピーター・ドラッカー(Peter Ferdinand Drucker、以下ドラッカー)を聞いたことがない人は、40~50代のビジネスパーソンなら少ないだろう。
日本のビジネス界に最も影響を与えた経営学の巨人である。

ドラッカーは多数の著作を残し、幅広い影響を与えたが、今回注目するのは彼が提言した「知識労働者(Knowledge worker)」についてだ。

彼の言う知識労働者は、単に肉体労働者のように知識を用いて労働する者というだけの意味ではない。労働の質的な変化であり、現代の諸現象のルーツとなる根本的な概念なのだ。

今の日本語で言うとプロフェッショナルというとイメージしやすい。労働時間や会社にではなく成果・達成に対して忠誠心があり、知識・思考を生産手段として問題解決を行い、生き甲斐として仕事をする者の事を指している。

「知識労働者」の増加による問題とは

現代社会の我々が、これからは「知識労働者」の時代か?と問われたら、そうだ、と答える方は多いだろう。

新卒一括採用・終身雇用を軸にした就社の時代は崩れつつあるし、コンサルタント・データサイエンティストといった新しい仕事が勃興しつつある。
管理職でなくともホワイトカラーの仕事はベルトコンベアの様に工程を踏んだ作業をするのではなく、顧客や市場のことを考え戦略構築・実行するといった、より知識労働的に変化しているはずだ。

こうした知識労働が増えていくことで、現代社会は様々な変化や齟齬に晒されている。

例えば「残業代」。
能力がない人が仕事をすると時間がかかるが、なぜか時間がかかった方が残業代がつき給与が多くなる。これは、肉体労働は個人の能力で成果の変化がおこりにくい、という時代の名残の典型だ。例えば工場では、人間はベルトコンベアの速度以上のスピードで仕事をすることはできない。

また、昨年末に労働安全衛生法改正が施行され、従業員のメンタルヘルス向上を目的としたストレスチェックが義務化されたが、これも知識労働者の増加に伴う社会の変化のひとつ。

これまで行われてきた会社での健康診断は過剰な肉体労働による健康悪化を防ぐものであったが、過剰な知識労働は精神障害(うつ等)を引き起こしがちで、これが非常に多くなっているため、ついに義務化という形で日本社会が変化を迫られたということになる。

おすすめするドラッカーの書籍

これら事例はそれぞれキャリア・精神衛生といった分野を形成するぐらい重要なテーマだが、根本的には知識労働者の誕生にまつわる問題であり、この概念の深さがよく分かる。

つまり、日々頭を悩める問題を本質的に理解し根本的に解決しようとすれば、「知識労働者」を理解することが欠かせないわけだ。

そこでお勧めするのが、ドラッカーの1969年の著作 『断絶の時代(The Age of Discontinuity)』。

ドラッカーは1950年末からの著作群を通じて知識労働者について議論したが、議論のエッセンスが最も詰まっているのがこの本と言える。

ドラッカーの智恵に触れやすい日本

余談だがドラッカーはかなりの知日派で、日本古美術品のコレクターとして度々来日し、また渋沢栄一など日本の大経営者の研究もした。

さらにドラッカーの著作の殆どを翻訳している上田惇生氏の精力的な仕事もあり、日本はドラッカーの智惠が最も容易に入手できる社会である。

是非書店に赴いて頂き、その幸せを体感して頂くことをおすすめする。