新型「NSX」で注目される高級車ブランド“アキュラ”
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新型「NSX」で注目される高級車ブランド“アキュラ”

2016年1月上旬に開催された「北米国際自動車ショー」で、ひときわ注目を集めたブランド、そしてクルマがあった。ホンダの米国現地法人が展開する「Acura(アキュラ)」と、このブランドのフラッグシップとなるスポーツカー、新型「NSX」である。アキュラは日本の自動車メーカーがアメリカで設立した初めての高級車ブランドであり、その後、トヨタや日産もこれに追随した。このブランドにはどんな意図や目的があるのだろうか。

“大衆車ブランド”から“高級車ブランド”へ

世界最大の自動車市場である北米でホンダが展開するアキュラは、トヨタの「LEXUS(レクサス)」、日産の「INFINITE(インフィニティ)」と並び、ラグジュアリー・セグメントに位置づけられるブランドだ。

すでに1959年、二輪の現地ブランド「アメリカン・ホンダ・モーター」を立ち上げていたホンダは、1963年から四輪でもアメリカ進出を果たし、1982年にオハイオ州で日本の自動車メーカーとして初の現地生産をスタートさせた。こうしたなかで、1986年に設立されたのがアキュラである。

1980年代、日本車は燃費効率の良さや故障の少なさなど、その性能・品質によって圧倒的な国際競争力を持ち、日本車メーカーの「良いものを安く作る」という生産システムが貿易摩擦を引き起こすほどとなっていた。しかし、一方では、北米市場で日本車はあくまでも「大衆車ブランド」にすぎず、魅力的なクルマとしては評価されていなかった。日本車が海外市場で欧米メーカーの高級車と渡り合うには、より所有欲を刺激する「ブランド」が必要だったのだ。

その先陣を切ったブランドがアキュラだ。トヨタのレクサス、日産のインフィニティが設立されたのは1989年で、アキュラのスタートから3年も後だった。アキュラは、時代の先を行くホンダのチャレンジング・スピリットを象徴するブランドともいえる。

アキュラは「インテグラ」と「レジェンド」の販売からスタートし、その後、セダンやクーペに加え、SUVをラインナップするなどして車種を拡充していく。ブランド設立から30年を迎えた現在は、エントリースポーツセダンの「ILX」、ミドルクラスセダンの「TLX」、フラッグシップセダンの「RLX」(下の写真)、さらにクロスオーバーSUVの「MDX」がラインナップされている。高級車ブランドにはめずらしく、V8エンジンのモデルが存在しないのも特徴的だ。

“大衆車ブランド”から“高級車ブランド”へ

特別な価値を持ったスポーツカー「NSX」

このアキュラで長らくフラッグシップスポーツの座を担っていたのが、1990年9月に販売が開始された初代NSXである。当時、F1のエンジンサプライヤーとしてマクラーレンにパワーユニットを供給していたホンダは、この第2期F1参戦を機に「世界に通用するHONDAの顔を持ちたい」との思いを抱き、世界初のオールアルミモノコック・ボディ、ミッドシップエンジン・リアドライブ、2シーターのスポーツカーである初代NSXを開発。走行テストには、マクラーレン・ホンダのエースドライバーだった故アイルトン・セナも参加した。

特別な価値を持ったスポーツカー「NSX」
(C)djandyw.com

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初代NSXには当初、2.0Lの直列4気筒エンジンが搭載される予定だったが、最終段階ではレジェンドの3.0L・V6エンジンをベースにしたものに変更された。これは、北米マーケットの需要をリサーチした結果であり、こうした点にも大衆車ブランドから脱却を図ろうとしたホンダの意図が見える。

燃費や排ガス規制への声が強まるなかで、NSXは2005年にいったんその歴史の幕を閉じ、その後は幾度か新モデルの開発が噂になった。そして、開発終了から約11年、アキュラのフラッグシップスポーツとして、2016年2月から満を持してアメリカで受注を開始したのが、2代目となる新型NSXである(メイン写真と下の写真)。

攻撃的なルックスもさることながら、目を見張るのは新型NSXの販売価格だ。初代NSXは徐々に値が上がっていったものの、登場時の価格は約800万円。ところが、新型NSXの15万6000〜20万5700ドルという価格を現在の為替レートで日本円に換算すると、約1750万〜2300万円。物価上昇分を加味しても、新モデルの価格が旧モデルの2倍以上になるのは極めて異例だ。

これは、初代モデルが中古車市場で20年以上、ずっと一定の価格水準を維持し続けたNSXならではの価格設定といえる。自動車ファンに特別な価値を持つクルマとして評価されているからこそ、価格も特別なものになったのだ。新型NSXによって、アキュラが今後、世界の自動車マーケットのなかでどのようにブランドの価値を高めていくのか、要注目である。

Text by Syuhei Kaneko