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- 恥をかかない大人の文章術 -

みっともない文章を防ぐ相場観~相場観で戦略的に文章を考えていく~

インターネットがビジネスシーンで当たり前に使われるようになり、かつてないほどにビジネスパーソンに問われるようになっているのが、実は文章を書く力だ。メール、レポート、企画書…。社内で、あるいは取引先とのやりとりで、みっともない思いをしないためにも、文章とどう付き合うか。恥をかかない大人の文章術を紹介する。

■今回のアドバイザー
ブックライター
上阪徹

1966年、兵庫県生まれ。早稲田大学商学部卒業後、リクルート・グループなどを経て95年よりブックライターに。著書に『文章は「書く前」に8割決まる』(サンマーク出版)、『書いて生きていく プロ文章論』(ミシマ社)ほか多数。

読み手の5W1Hを意識してみる

上阪「では、相場観を意識した文章とは、どういうものか。世間や会社など、文章を読む相手が、どのくらいの相場感覚を持っているか、それを理解した上で書かれている文章です。

例えば、ベンチャー企業のトップにインタビューをして仕事の極意を聞く。しかし、これを50代のミドル向け雑誌に書くのと、20代の若手ビジネスパーソン向け雑誌に書くのとでは、中身が大きく異なります。20代はどんな状況にあって、何を求めているか。50代はどうか、書き手が理解しておく必要があるわけです。それができていれば、20代の若手ビジネスパーソンに『部下を扱う人間関係の機微』について書いたり、50代のミドルに『セールスで相手に買う気を起こさせるコツ』について書くようなことはなくなる。ピント外れの文章を作らずに済むのです。

大事なことは、誰が、何を、いつ、どこで、どんな目的で、どうやって『読む』のか。それを踏まえながら文章を書くこと。読み手の5W1Hを意識するのです。そうすれば、みっともない事態を防ぎ、ピントの合った文章を書くことができます」

何を強調すればいいのか、が見えてくる

上阪「一方で相場観があれば、それを使って戦略的に文章を組み立てることができるようになります。

例えば、社会はどんな心理状態にあるのか。社会情勢はどうか。何か社会を騒がせているような旬のニュースがあれば、それを冒頭の枕詞に使ってしまう。そうすれば、読み手は文章にすっと入っていけます。

また、例えば雑誌の記事なら、インタビューする相手が社会からどう見られているか。それを理解すれば、逆手に取った展開ができる。『この人はまず、こんなことは言わないだろうなぁ』という発言が文章中に出てくれば、読者はドキっとするはずです。あえてこれを冒頭に持ってきてしまうことで、ギャップを演出する。こういうことができるのも、相場観があるからです。

ビジネス文書を書くときにも、ちょっとでもいいので、こういうことに頭をめぐらせてみる。企画書でも、依頼書でも、提案書でも、読み手やテーマをめぐる周辺状況について頭をめぐらせてみる。そうすると、何を強調すればいいのか、が見えてきます。何を書くべきか、何を書くべきでないか、どんな順番で書くべきなのかのヒントにもなります」

相場観で文章はまったく変わっていく

上阪「そして相場観にはもうひとつの理解が必要です。それは、実は書いている自分も、読み手からは相場観をもって見られている、ということ。

掲示板でなんともうまいコメントを書く人がいます。それは、自分も含めた相場観をうまく活用している人だと思います。自分が今こう書くから面白い、ということが計算できている。

例えば会社でも、20代の若い社員が、あたかも50代のベテラン幹部のような、マクロ経済から歴史までを踏まえた大上段に構えたレポートを出しても、実は読み手にはピンとこないでしょう。逆に、荒削りで専門用語は少ないけれど、現場はほとんど離れてしまっている50代のベテランには決して書けないような、最前線のリアリティのあるエピソードがたくさん詰まったレポートを出したとすればどうでしょう。それは、20代の若い社員にしか書けない、好感度の高いレポートになる。

それこそ20代の若い社員には、40代や50代のような意見は期待されていない。むしろ20代らしい見方こそ、求められている。自分がどう見られているかという相場観があれば、そのことに気づけるのです」

書店の雑誌売り場は、相場観学習の宝庫

上阪「では、相場観はどのようにすれば身につくのでしょうか。相場観は本当にさまざまな要素から構成されます。社内の情報はもちろん、取引先の情報、業界の情報、さらには社会情勢も必要になる。

といっても、あらゆる情報を知っておくことは不可能ですから、広く浅くで十分だと私は思っています。ネットやテレビの情報を軽くチェックしておくことも有効ですが、私がお勧めするのは、書店です。何より社会の人々が求めている情報は、書店の雑誌売り場にあると思っています。活字離れがいわれますが、今なお大型書店は時間帯によってはすれ違うのも大変なほどの賑わいです。

中でも最も混んでいるのが、雑誌売り場。雑誌コーナーには、あらゆる年代の、いろんなテーマの雑誌が並んでいます。いろんな年代の、いろんな人たちが持っている相場観が、そこには詰まっているのです。表紙の見出しを追いかけるだけでも十分。世の中の人々はどんなことに興味を持っているのか。それを感じるだけでも、実は文章はまったく違ったものになるのです。

私はビジネスの世界で『文章がうまい』と言われている人たちは、相場観に長けている人たちなのではないかと思っています。だから的確な表現ができるのです」

<今講座のポイント>

1.書く際には『周辺状況』=相場観を意識する
2.相場観があれば、戦略的に文章を構築できる
3.相場観学習には、書店の雑誌売り場へ