「どう書くか」よりも、はるかに大事な「何を書くか」~「目的」と「誰に」を強く意識する~
- 恥をかかない大人の文章術 -

「どう書くか」よりも、はるかに大事な「何を書くか」~「目的」と「誰に」を強く意識する~

インターネットがビジネスシーンで当たり前に使われるようになり、かつてないほどにビジネスパーソンに問われるようになっているのが、実は文章を書く力だ。メール、レポート、企画書…。社内で、あるいは取引先とのやりとりで、みっともない思いをしないためにも、文章とどう付き合うか。恥をかかない大人の文章術を紹介する。

■今回のアドバイザー
ブックライター
上阪徹

1966年、兵庫県生まれ。早稲田大学商学部卒業後、リクルート・グループなどを経て95年よりブックライターに。著書に『文章は「書く前」に8割決まる』(サンマーク出版)、『書いて生きていく プロ文章論』(ミシマ社)ほか多数。

うまい文章を書いても、伝わらなかったら本末転倒

上阪「『どうすれば、うまく書くことができますか』と問われることがあります。しかし、実のところ私自身は、どうすればうまく書けるのか、といった技術的なことを考えて文章を書くことはまずありません。

そもそも文章は情報を伝達するツールに過ぎません。文章で最も大事なことは『何を書くか』だからです。『どう書くか』を学んで、いくら技術を駆使してうまい文章を書いたとしても、伝えたいことが伝えられなかったとしたら本末転倒です。

そんなことはわかっている、という声が聞こえてきそうですが、本当に大丈夫でしょうか。いつの間にか、書くことそのものが、目的になってはいないでしょうか。実はそうなると、文章を書くことが苦痛になったり、楽しくなくなったり、難しいものに思えてしまいます。どんな文章も書く目的があるはずです。その目的があれば、どう書くか、の準備ができます。

『この文章を書く目的は何だっけ』を頭に叩き込んでから書く。その習慣をつけること。目的を意識することは、実はわかりやすい文章の第一歩、そして文章を書きやすくしてくれる第一歩なのです」

社長向けと課長向けは同じ文章でいい?

上阪「文章を書くときに、目的と同時にもうひとつ、私が強く意識することがあります。それは、その文章を読ませたい相手は誰か、ということです。

もっというと、目的を達成するためには、誰に読ませたいのか、が極めて重要なのです。これまた『当たり前』と思われがちですが、実は簡単ではない。例えば、取引先に提案書を出す。さて、『誰に』向けてこの提案書を書きますか。取引先の担当者でしょうか。それとも上司か。プロジェクトの決裁権を持っている、そのまた上司か。もしかすると社長でしょうか。

では、想像してみてください。担当者向けに書くのと、上司に向けたものと、役員に向けたもの、社長に向けたものが、すべて同じ文面でいいでしょうか。いや、きっと違うはずです。担当者に向けて書いたものを、もし社長が見たら、どう感じるでしょうか。この場合の文章の最終的な目的は、『提案を成立させること』。その目的を達成するには、『誰に読ませなければいけないか』というフォーカスが必要になってくるのです。それがはっきりしないと、文章は書き始められない。場合によっては、失礼な文章を書いてしまいかねないからです」

『誰に』は自分で決めてしまえばいい

上阪「文章を書く仕事をしてきて発見したことですが、『誰に』が絞り込めていればいるほど、『何を書くか』がはっきり見えてきます。『誰か』というとっかかりがひとつできるだけで、何を伝えればいいか、どの順番で伝えていくか、優先順位が明確になっていく。つまり、文章を書く『目的』と『誰か』をはっきりさせることは、文章を書きやすくすることにつながるのです。

逆にいえば、読み手をしっかりイメージできていないと的確な文章は書けない、といっても過言ではありません。しかし、はっきりした読み手のターゲットが定まっていないこともあります。では、どうするか。自分でターゲットを定めてしまえばいいのです。提案書や依頼書、メールでも、なんとなくお客さま全般ではなく、『担当者に』『担当者の上司に』『部長に』とターゲットを個人に定め、彼・彼女の顔を思い浮かべながら書く。そうすれば『お客さま全般』に向けた書類とは、まったく違うものができます。

わずか一行でもいい。ワンフレーズでもいい。その人が相手だからこそ書ける内容を見つけて書く。相手が喜んでくれることを意識して書いてみる。その一行が効くのです。『ちょっと違うな』という空気を漂わせることができるのです」