特別なメルセデス・ベンツ、「AMG」というブランド
- スーパーカーブランド【メルセデス・ベンツ】 -

特別なメルセデス・ベンツ、「AMG」というブランド

AMGといえば、メルセデス・ベンツの中でもとりわけ高性能なエンジンを搭載し、スーパーカーをも凌駕するパフォーマンスを持つモデルラインである。しかし、AMGはただの”高性能メルセデス”につけられたグレード名ではない。今からおよそ半世紀前、2人のエンジニアが創りだしたレース用エンジンに端を発する、歴史と伝統を持つ由緒正しい“ブランド”なのである。

ライバルたちを圧倒するハイパワーエンジン

コンパクトハッチのAクラスから、フラッグシップセダンのSクラス、究極のオフロードビークル、Gクラスまで、現在、メルセデス・ベンツのラインナップのほぼすべてにAMGモデルが用意されている。いずれのAMGモデルも、専用デザインのエアロパーツや大径ホイールによる迫力あるエクステリアと鍛えぬかれた足回り、そしてライバルたちを圧倒するハイパワーなエンジンを搭載する。

AMGは1960年代、ダイムラー・ベンツでレース用エンジンを開発していた2人のエンジニア、ハンス・ヴェルナー・アウフレヒトとエバハルト・メルヒャーの2人が独自に開発を継続したのを発祥とする。「AMG」の名は、2人の名前である「アウフレヒト」「メルヒャー」、そして2人が育った街の「グローザスバッハ」の頭文字から付けられた。その後、1971年のスパ・フランコルシャン24時間レースでAMGが手がけた「300 SEL 6.8」がクラス優勝したことにより、その名が世界に知られることとなる。

1970年代からはエンジンメーカーとしてメルセデス・ベンツのチューニングを手がけ、1990年にはメルセデス・ベンツの公式なパートナー、2005年にはメルセデス・ベンツの100%子会社「メルセデスAMG」となった。以降、AMGはメルセデス・ベンツのハイパフォーマンスグレードとしてラインナップされるようになり、同時にC63などに搭載された自然吸気V8、6.3L「M156」エンジンなど、名機ともいうべきエンジンを開発していくのである。

AMGのエンジン哲学「One man – One Engine」

AMGをAMGたらしめているのは、現在もやはりエンジンだ。A45に搭載される4気筒2.0Lターボ「M133」エンジンに始まり、「M177」「M178」「M157」という3種のV8ツインターボエンジン、そしてS65やG65などに搭載されるV12、6.0Lツインターボ「M279」にいたるまで、AMGのエンジンはすべて「One man – One Engine」で作られている。これは、ひとりのマイスターがエンジン製造の全工程を一貫して担当するということである。この哲学に基づき、AMGのエンジンには、それぞれのマイスターのサインが刻まれたプレートが取り付けられる。
現在のAMGには、「AMGスピードシフトDCT」を始めとしたトランスミッションやサスペンションシステム「AMGライドコントロールスポーツサスペンション」、車速感応式パワーステアリングの「AMGスポーツパラメータステアリング」など、エンジン以外にも独自開発デバイスを多数搭載している。A各モデルはすべてメルセデス・ベンツの量産車と同じ品質基準をクリアしており、信頼性も抜群だ。

メルセデスAMGブランドで販売される「GT」

AMGでは、メルセデス・ベンツ各モデルのハイパフォーマンスバージョンの他に、独自のモデルを生み出している。その第1弾は、2009年から2014年にかけて生産された「メルセデス・ベンツSLS AMG」。軽量なアルミスペースフレームに、往年の「300SL」を思わせるスタイリングのボディが組み合わされた高級スポーツカーだった。
現在はSLSの実質的な後継車である「メルセデスAMG GT」が生産されている。それまでと変わって「メルセデスAMG」ブランドで販売されるこのスポーツカーは、FRらしいロングノーズ・ショートデッキスタイルが特徴で、エンジンは「M178」4.0L V8ツインターボエンジンを搭載する。その出力は標準モデルの「GT」で462ps、高出力版の「GT S」では510psに達する。
レーシングエンジンのチューニングから、エンジンメーカー、そしてオリジナルモデルの開発までを行う自動車メーカーへと、大きな成長を遂げてきたAMG。会社としての形態や手法は変わっても、「AMG」というブランドが持つ名声とそれを裏付けるパフォーマンスは、今も変わらない。そして、AMGを創業した2人のエンジニアの信念は、これからも受け継がれていくことだろう。

Text by Muneyoshi Kitani