007の舞台「スイス・フルカ峠」をボンドカーで走る
- 大人のための最新自動車事情 -

007の舞台「スイス・フルカ峠」をボンドカーで走る

映画の舞台となった場所を実際に訪れて思いを馳せる「聖地巡礼」は、愛好家の嗜みのひとつだ。しかし、カーチェイスシーンが撮影されたロケ地なら、ただ訪れるだけではなく、自ら映画と同じクルマのハンドルを握ってドライブすれば、さらに貴重な体験になる。スイスの「フルカ峠」は、そんな大人の男の嗜みにうってつけのドライビングスポットである。ここは、1964年に公開された007シリーズの第3作『ゴールドフィンガー』でジェームズ・ボンドがカーチェイスを演じたことで知られる、クルマ好きにとっても聖地といえる場所だ。

ボンドの愛車=アストンマーチンDBモデル

イギリス秘密情報部MI6のエージェントであり、“007”のコードネームを持つジェームズ・ボンドの活躍を描いたスパイ映画の金字塔『007』シリーズ。映画の公開時には、すべてにおいて超一流であるボンドが身につけるスーツや時計などが常に話題となるが、なかでも注目を集め、映画を語るうえでも欠かせないのがボンドの愛車「ボンドカー」である。

『007』シリーズには、ロータス・エスプリやトヨタ2000GT、BMW・Z8などさまざまな高級スポーツカーが登場するが、ファンがボンドカーとして思い浮かべるのは、やはりイギリスのラグジュアリー・スポーツカー・ブランドであるアストンマーチン、特に「DB」の名を冠したモデルだろう。

第3作『ゴールドフィンガー』でショーン・コネリー演じるボンドとともに大活躍したアストンマーチンDB5(下の写真)は、その後、『サンダーボール作戦』『スカイフォール』でもボンドカーとして使用され、『ゴールデンアイ』『トゥモロー・ネバー・ダイ』『カジノ・ロワイヤル』、さらに最新作の『スペクター』にも登場した。
第6作『女王陛下の007』のボンドカーはアストンマーチンDBS(下の写真)。1972年にいったん生産が終わったが、2007年に新モデルが開発され、第21作『カジノ・ロワイヤル』に再び登場した。続く第22作『慰めの報酬』でもボンドカーとして使用されている。最新作『スペクター』のボンドカーも、アストンマーチンがボンドのために開発したというアストンマーチンDB10である。スポーツカーとしての性能はもちろん、気品のあるルックスも相まって、ボンドカーといえばアストンマーチンというイメージを抱く人が多い。

スリル満点のフルカ峠のワインディングロード

アストンマーチンを駆ってボンドが『ゴールドフィンガー』で迫力あるカーチェイスを繰り広げた場所として有名なのが、スイスのフルカ峠だ。この「聖地」をドライブするなら当然、アストンマーチンDB5やDBSを選びたいが、残念ながら両モデルとも生産終了している。それならば、『スペクター』で使用されたボンドカー、DB10のベースとなったアストンマーチンV8ヴァンテージではどうだろうか(下の写真)。
フルカ峠は、アルプスの中腹にあり、スイスの東部と西部をつなぐ重要な道である。標高は2431m。周りを見渡せば山塊や氷河、渓谷が広がり、スイスの原風景が広がる。

また、この峠はたんに絶景を味わえるだけでなく、非常にスリリングなコースとしても知られる。それは、すれ違うのも大変なくらい道が細かったり、下が崖にもかかわらず、ガードレールでなく背の低い石が等間隔に置かれているだけのポイントがあるためだ。高所や景色が綺麗な場所で、景観を損ねないための配慮だというが、初めて運転する人にとっては、かなりの緊張感があるだろう。しかし、運転に慣れている地元のドライバーたちは、このコースでもスピードをガンガン出して駆け抜けていくのだ。
峠の頂上では、ローヌ氷河が出迎えてくれる。有料だが、その気になれば氷河の中に入って美しいブルーの世界を探索することも可能だ。ちなみにこの氷河はローヌ川の始点でもある。南部分の氷が溶け出し、川となり、フランス南部へと流れている。
注意してほしいのは、氷河が残るような場所のため、冬季は例年11月から春までの間は閉鎖されること。時期は年によって異なるので、チェックしながら旅の予定を立てたい。

名作『ゴールドフィンガー』でボンドがカーチェイスを演じた峠を、自らアストンマーチンのハンドルを握って追体験する。こんな贅沢な海外ドライブこそ、大人の男の「聖地巡礼」といえるのではないだろうか。

Text by Taisuke Seki(euphoria FACTORY)