注ぐ飲み物で表情を変える富士山グラス
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注ぐ飲み物で表情を変える富士山グラス

グラスの底に雪を抱いた富士山が鎮座する「富士山グラス」は、赤、青、緑など飲み物の色によって山肌の色合いが変化。高級感とともに遊び心も感じさせるグラスで、昨年だけで5万5000個以上を売り上げたという。江戸硝子の確かな技術が活かされているこの一品について紹介しよう。

特殊なグラス実現のために自動で回転する金型を開発

発売前にロックグラスを出展した「おみやげグランプリ2015」では、グランプリ・観光庁長官賞を獲得。昨年2月に発売されるとSNSを通じて中国や台湾で話題となり、国内でも人気を博している富士山グラス。

製造しているのは、東京・江戸川区にある田島硝子で、同社は伝統工芸品「江戸硝子」の製法を受け継ぐ会社でもある。もちろん、「富士山グラス」もその技術を活かしたものだ。田島硝子代表取締役の田嶌大輔氏に、この人気のグラスについて、話を伺った。
田島硝子では、主に吹き硝子の一種である型吹き成形と呼ばれる技法によって、ひとつひとつの製品を手作りで生産している。型吹き成形とは、吹き棹の先に巻き取ったガラスを金型へ吹き込んで、形を整えていくもの。このとき、棹をまわすことで、グラスの表面がつややかで高級感ある仕上がりになるのだそうだ。

しかし、タンブラーとロックグラスがある「富士山グラス」は底に富士山がデザインされた特殊な形状。金型の底に富士山が彫られており、形は線対称ではないので、棹をまわすと作ることができない。

そこで考案されたのが、側面部分だけが自動的にまわる金型。これによって、棹をまわすことなく、つややかな肌(表面)を持つとともに、底に富士山を鎮座するグラスが誕生したのだそうだ。
上の写真が、側面が自動的にまわる金型。まずは窯に置かれた坩堝のなかで1400度ほどに熱されたガラス原料を吹き棹に巻き取り、それをこの金型に吹き込んで成形することになる。

成形が終わる頃にはガラスの温度は600〜800度になっており、少し冷まして徐冷炉に入れるまでの工程が、4人1組で流れるように進められる。成形に時間をかけすぎるとガラスが冷めてしまうため、職人さんの確かな腕が必要なのだそうだ。

徐冷炉で2時間かけて冷ましたあとも、飲み口のカットや研磨など、各工程を担当する職人さんの技術がつぎ込まれる。最後は、研磨剤を吹き付けるサンドブラストで雪が描かれて完成。手作りで、厳しい検品も行っているため、生産は月に5000個ほどが限界だという。

富士山グラスは富士山三部作の集大成

この「富士山グラス」は、田島硝子による富士山三部作の第3弾として作られたもの。それまでの2品もまた、ユニークさと美しさを併せ持っている。
「富士山宝永グラス」は、冷たいビールを注ぐとその泡が富士山頂の雪を表現する仕組み。型吹き成形後、再度、加熱をして、宝永火口をモチーフにした「くぼみ」を作り、反対側には富士さくらの切子があしらわれている。くぼみには親指がおさまり、切子は滑り止めの役割も果たしているため、水滴がついてもしっかりと持つことができる優れものだ。
めでたい席に相応しい富士山祝盃は、江戸切子にも用いられる透明のガラスに薄い色ガラスを重ねた「被せガラス」という技法を活かしたもの。山頂の雪はサンドブラストで表現されている。
そして、三部作の締めくくりには世界の誰もが使い勝手がいいようにと、ロックグラスとタンブラーが選ばれた。ところで、飲み物の色が山肌に反映するという最大の特色は、実は偶然の産物だったそうだ。

「ロックグラスやタンブラーで富士山の形状を表現するなら、吹き硝子の場合、底肉の部分に取り入れるしかありませんでした。その結果、底が富士山型に凹んでいて、しかも山肌がぼこぼことしているので、飲み物の色がうまく乱反射したんです。底が平らだと底肉が厚くても飲み物の色は反射しません」と田嶌氏。

もちろん、これはグラスの表面をつややかにして、内部の富士山がしっかり見えることを念頭に作ったからこそ起こった偶然だろう。季節や時間帯によって表情を変える実物の富士山同様に、多彩なバリエーションの富士山を堪能できるこのグラス。自宅用にも、海外の知人へのおみやげやプレゼントにもぴったりな逸品といえる。

なお、「富士山グラス」は現在、ロックグラス、タンブラーともに人気のため、しばらく待つ必要があるが、個人で少数の場合ならば、注文から手元に届くまでに最長でも2ヶ月待てばよいそうだ。到着するまで、どのようなドリンクをグラスに注ぐか、あれこれ考えて過ごすのもいいのではないだろうか。また、富士山祝盃も1ヶ月ほどかかるそうなので、花見に持っていきたい場合は早めに注文するのがおすすめだ。

Text by Fumio Miyata