至宝のショーファードリブン、トヨタ・センチュリー
- スーパーカーブランド【トヨタ】 -

最上級の移動空間を提供するショーファードリブンカーを詳しく紹介

ショーファードリブンカーとは、運転はショーファー(運転手)に任せ、オーナー自身は後部座席に乗るタイプの車のことだ。単に「送り迎え」のためではなく、要人や企業のトップなどのVIPを迎え、もてなし、最上級の移動空間を提供する車を指す。欧州の超高級車、たとえば「メルセデス・マイバッハSクラス」「ロールス・ロイス ファントム」などは、まさにオーナーがハンドルを握らず、後席に乗ることを前提とした車である。このうち、日本車らしい佇まいを現在も守り続け、天皇・皇后両陛下の御料車としても採用されている至宝のショーファードリブンカーが「トヨタ・センチュリー」だ。

創始者の生誕100周年を記念した最高級車

初代センチュリーは、トヨタグループの創始者である豊田佐吉の生誕100周年を記念し、1967年に誕生した。名称の「センチュリー(世紀)」は、創業者の生誕100年と同時に、この年が明治100年であったことに因んでいる。
(C)Mytho88
初代モデルは全4グレードがラインナップされ、最高上級仕様は「Dタイプ」。ドライバーの負担を軽減する運転のしやすさを備えながらも、6対4で後席の居心地を最大限に考慮された新設計の車体に、こちらも新設計の3.0L V8 OHVエンジンが与えられた画期的なショーファードリブンカーであった。
(C)bizmac

日本車らしさを守り、時代に流されない精神

現在に続く2代目センチュリーが誕生したのは、初代登場から30年後の1997年だ。エンジンは、それまでのV8に代わり、国産車唯一にして最大の専用設計の5.0L V12エンジンを搭載。V12といえば、フェラーリやランボルギーニなど高性能スポーツの象徴であり、センチュリー専用のV12エンジンも最高出力280ps/5200rpm、最大トルク46.9kgm/4000rpmを発揮するが、この車が目指したのはあくまでも“余裕”。エンジンは脇役に徹し、その滑らかな回転や加速感、振動の少なさが後席での快適性を比類なきレベルにまで高めている。

そしてその現行型には、ウールファブリックシートと本皮革シートを用意し、後席はリクライニング機能はもちろん、助手席のシートバッグの中央部分が後ろに倒れて足を延ばすことが可能。人が耳障りと感じる200~500Hz帯のロードノイズを抑え、心地よい静粛性を実現。エンジンと車体の性能が高いレベルで相まって、最大限のくつろぎを提供してくれる。

デザインも、直線と面を基調としたスタイルやフェンダーミラーなど、初代同様に日本車らしさを守り、時代に流されないブレない精神を静かに語っている。下の写真は、2007年の東京モーターショーに出品された「プレミアムセンチュリー」だ。専用のフロントグリルや、内装にウールを使用することなどにより、さらなる高級化がはかられている。

全工程を熟練の技術者が手作業で仕上げる

専用ラインでの手作り生産も継承された。ボディのスポット溶接や内装の組み立てなど、センチュリーの製造における360に及ぶ工程はすべて熟練の技術者による手作業だ。その技術者一人ひとりの魂が総体となって「センチュリー」の壮麗な佇まいに現れているのはいうまでもない。

高価な腕時計や宝石の加工、国宝級の神社仏閣の修繕や漆器の製作が手作業で行われているように、真に高級なものは人の手から生まれてくる。センチュリーの内外装からは、流行りとは次元の異なる独特の温もり、香りが感じられ、もはや職工芸術品といっても過言ではない。次期センチュリーでは、V12エンジンに変わってV8エンジン+モーターが採用されるとの話があるが、それは小さな問題に過ぎない。人の手がこの至宝のショーファードリブンカーを生み出す限り、センチュリーはその価値を守り続ける。

Text by Tetsuya Abe

Photo by (C)Mic(main)