伝説のレース名を冠したフェラーリの最強ロードカー
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伝説のレース名を冠したフェラーリの最強ロードカー

「ツール・ド・フランス」と聞いて自転車とともに自動車を思い浮かべたあなたは、かなりのオートレース通だ。実は、自転車レースの「ツール・ド・フランス」は、1899年に行われた同名のフランス一周の自動車レースをヒントに1903年から始まった。時は流れ1950〜60年代、自動車レースの「ツール・ド・フランス」は、タイトなコーナーが連続するワインディングやサーキットを舞台に、1日に数百キロの距離を駆ける耐久レースとして名を馳せる。そこで4度連続の優勝を果たしたのが、1986年型『フェラーリ 250GTベルリネッタ』。2015年11月8日に「フィナーリ・モンディアーリ」でオフィシャルデビューした『フェラーリ F12tdf』は、この『フェラーリ 250GTベルリネッタ』の魂を受け継ぐモデルである。

ラ・フェラーリに次ぐラップタイムを記録

『F12tdf』は、フェラーリがフラッグシップとして位置づける『F12 ベルリネッタ』をベースに開発された。『tdf』は「ツール・ド・フランス」の頭文字から取られている。余談だが、『250GTベルリネッタ』にも、『tdf』というモデルが存在した。公道とサーキットの両方を駆け巡る伝説のレース名を冠するだけに、公道を走りつつサーキットでも通用する究極のロードカーを目指している。

その完成度の高さは、公式発表にある「フェラーリDNAの核を成す全ての技術革新が込められています」のひと言からも読み取れる。0-100km/hでは2.9秒、0-200km/hでは7.9秒という記録的な加速性能を実現。フェラーリの本拠地、聖地マラネロに設けられたテストコース「フィオラノサーキット」のラップタイムは1分21秒フラットで、ロードカーとしては、最新のスペチアーレである『ラ・フェラーリ』の1分19秒9に次ぐタイムだ。ちなみに、ベースモデルでありフラッグシップの『F12 ベルリネッタ』のタイムは1分23秒フラット。『F12tdf』はそこから2秒も縮めていることになる。

跳ね馬を手なずける最新技術を初採用

脅威の動力性能を支える心臓部は、V型12気筒6.3リッターエンジン。『F12ベルリネッタ』と同じだが、最高出力は740ps/8250rpmから780PS/8500rpm、最大トルクは70.3kgm/6000rpmから705Nm/6750rpmへとアップされている。特筆すべきは、最大トルクの80%が2500rpmで発生する点だ。これはスタート時、カタパルトに押し出されるような猛烈な加速を意味し、その加速は、最高許容回転数の8900rpmまで途切れることなく続いていく。
数値だけ見ると、まるでじゃじゃ馬。しかし、実際にステアリングを握れば、主人に従順な賢い跳ね馬であることがわかる。『F12 tdf』で初めて採用された「バーチャル・ショートホイールベース・システム」は、誰もが性能をフルに活用してドライビングを堪能できる機能だ。ステアリングホイールの切り込み角度と入力速度、車両速度等のデータをもとに理想的なステアリング・アングルを算出、自動的にリアホイールの舵角を調整してくれる。

優美さと機能性が調和したスタイリング

フェラーリの魅力は高い動力性能と官能的なスタイルだ。もちろん、『F12 tdf』のボディデザインもフェラーリプロダクトの伝統を継承している。それは、彫刻のような美しさと機能性の調和である。彫刻のような優美さは、説明の必要がないだろう。『F12 ベルリネッタ』よりも広くなったフロント及びリア・トレッドによって、よりアグレッシブなフォルムとなった。
エクステリアに大きな影響を与えているのが機能性の追求、特に、エアロダイナミクスを高める過程で生まれたデザインだ。フロントバンパー、フロント側面のエアブリッジ、リアスポイラーの形状を工夫することで、『F12 ベルリネッタ』の2倍にあたるエアロダイナミクス効率数値1.6を達成。ダウンフォースも30%増加し、107kgから230kgへと大幅にアップした。

『F12 tdf』は799台の限定生産。幾多のレースで勝利を収め、いまだに愛されるフェラーリである『250GT ベルリネッタ』と同じように、歴史に残るモデルとなるはずだ。

Text by Tsukasa Sasabayashi