変化球デートに最適な“隠れ家”的「ラーメン懐石」
- 40男、至高のグルメガイド -

変化球デートに最適な“隠れ家”的「ラーメン懐石」

もはや日本の国民食ともいえるラーメンだが、女性のエスコートに長けた40男なら、デートでラーメンという選択肢はないかもしれない。しかし、完全予約制(基本は紹介制)にして、メニューはコースのみの「ラーメン懐石」と聞けば、どうだろうか。きっと好奇心をくすぐられる読者も多いに違いない。そんなお店が、今回紹介する東京・広尾の『ゲンエイワガン(GENEI.WAGAN)』。一度行けばラーメン店の概念が180度覆る、芸能界の食通たちもお忍びで訪れる超穴場店である。

Barを思わせる薄暗い店内は非日常感満載

地下鉄日比谷線広尾駅を出て広尾商店街を抜け、広尾一丁目の交差点から程近いビルの地下。間接照明にほんのりと照らされた黒い看板には『GENEI.WAGAN』の文字とともに、営業時間の表記のみ。どこにも「ラーメン」の文字すらない。

Barを思わせる薄暗い店内は非日常感満載

階段を降りていくと、いかにも「会員制」を思わせる黒に赤の縁取りがされたドアとインターホン。そして、インターホンを押してドアを空ければ、そこに広がるのは薄暗い「隠れ家Bar」のような空間。店に入るまでの段階から、え? え? という戸惑いの連続。「今日、ラーメン屋予約しといたから」と言われて、ここに連れてこられた彼女は、いい意味で、ことごとく期待を裏切られることになるだろう。それこそが、非日常の演出にこだわる同店オーナー入江さんの狙いでもある。

「僕は、飲食店は日常(オン)か非日常(オフ)どちらかに振るべきだと思っているんです。ラーメンという食べ物も普通はオンですが、それが戸惑いの連続からスタートして、最後は『楽しかった』ってところに持っていけたら最高じゃないですか? 僕がやりたいのは、そういうお店なんです」(入江さん)。

散々いいお店も経験してきた女性に「出た、ラーメン!」と思わせておいて、帰る頃にはテンションもV字回復。そんな効果を生み出せる空間なのだ。

一度食べたラーメンは2度と食べられない

もちろん、肝心の料理も抜かりはない。例えば、取材時に頼んだコースは、先付に始まり、前菜盛り合わせ4種、蒸し物、ジャスミン茶焼豚の炙りときて、メインはラーメン&卵かけご飯。これにデザートまで付いて5000円(別途ドリンク+サービス料10%)。コスパの良さもさることながら、広尾や恵比寿界隈の企業の重役たちが会食で訪れるケースも多いというだけあって、それぞれ味も確か。なかでもラーメンとイクラのパフェは人気の高い定番メニューだとか。

メインの「潮薫醤油(しおかおるしょうゆ)ラーメン」は、干しエビを使った自家製の醤油スープに、自家製の極細麺で、実にやさしく上品な味わい。しかし、このラーメンは初回来店時しか食べることができない。なぜなら、この店では来店回数に応じて出されるラーメンが変わっていくからだ。1度目は誰もが「潮薫醤油(しおかおるしょうゆ)ラーメン」だが、以降、海老薫醤油→海老薫味噌→担々麺といった具合に変わっていく上、1度食べたラーメンは2度と食べられないという縛りがあるのだ。

一度食べたラーメンは2度と食べられない

「初めての方同士なら食べていただくラーメンは同じですが、男性が2度目で女性が初めてなら、当然違うラーメンを食べることになります。ラーメンは絶対に被ることがなくて、これまでで一番食べた常連さんは220杯ですね」(入江さん)。

これぞ、エンターテインメントにこだわる同店の遊び心が最大限に発揮されたシステムであり、コンプリートしたくなる気持ちもわかるというもの。今年10月には、六本木に系列店の麺劇場「玄瑛」2号店(1号店は福岡)もオープン。イタリアンやフレンチに慣れた彼女をも驚かせることができる、デートの隠し球として使いたい店、それが『ゲンエイワガン(GENEI.WAGAN)』だ。

Text by Naoya Aoyagi(Seidansha)

Photographs by Takao Okazaki