西麻布の隠れ家でステーキと焼肉を味わい尽くす
- 40男、至高のグルメガイド -

西麻布の隠れ家でステーキと焼肉を味わい尽くす

「何が食べたい?」「えっとねえ、お肉!」…。男と女の間で何億回と繰り返されたと思われるこの会話。西麻布の路地にひっそりとたたずむ『焼肉ステーキ あつし』は、その後に続くサジェスチョンに新しい風を吹き込む都会の隠れ家だ。店名からおわかりのように、焼肉とステーキの両方を楽しむことができる。

鮮度にこだわった山形牛の処女牛

黒を基調に余計な装飾を排除したシックな店内は、8席の鉄板カウンターと、焼肉のテーブル席、2つの個室で構成されている。カウンター席ではステーキが、テーブル席では焼肉とステーキを楽しめるので、二刀流を目指す夜はテーブル席を予約したいところ。しかし、デートのシチュエーションとなるとやはり、女性店長の千葉一希さんが腕をふるう鉄板カウンターが人気席だという。人気メニューを網羅したコース(あつしコース18000円、ステーキコース16000円)を注文すれば、名物の「コンビーフ」や牛の生ハム「ブレザオラ」といった一品料理や、鉄板ステージの上を踊る美しい肉にそそられ、会話もワイン(グラス800円〜)も止まらない。あわせるドリンクは、コースの料理に合わせた“正解ワイン”が5杯サーブされるワインセット(5000円)は、味はもちろんコスパを考えると使わない手はないだろう。
経営するのは、横浜の精肉店『加藤牛肉店』の三代目であり、銀座の高級牛肉料理店『加藤牛肉店』を営む加藤敦氏だ。「山形牛の処女牛のおいしさを知ってもらいたい」という熱い思いを貫く加藤氏は、人の手を加えた熟成肉ブームには反旗を翻し、半頭買いして系列の三店舗でどんどん使いきっていくという鮮度至上主義の持ち主。仕入先は、育て方や餌を把握している特定の10農家のみなので、高い品質で味が安定しているのも売りのひとつだ。

こちらの肉の特徴は、霜降りはもちろん赤身でもサシがばっちり入っていること。赤身ブームの昨今、霜降りを敬遠する人が多いが、ぜひ一口食べてみてほしい。脂がサラリとしており、胃もたれしない。騙されたと思って一口食べてみたが最後、虜になる人が続出中とのこと。料理長曰く、霜降りならばサーロインステーキ(100g/6000円)やリブ芯(4000円)、厚切りザブトン(3800円)が、赤身派にはシャトーブリアン(100g/8000円)や、味と香りが豊かなランボソ(100g/4500円)、キングオブ赤身の異名をとるクリ(1200円)がおすすめだとか。

40代男性を虜にしたトロふりかけ丼とは何か?

ステーキや焼肉で新鮮な肉を堪能する一方で、創意工夫に富んだアラカルトメニューにもファンが多い。横浜の店舗や通販でもなかなか手に入らないオリジナルの看板商品「コンビーフ」はもちろん、肉の力量をチェックしたい向きには、その日のオススメ部位の三種盛り(3600円)をスターターに。焼肉屋の定番、キムチやナムル、チューハイといった気楽なメニューを挟むのもまた一興だ。
40代男性にひときわ人気のメニューが、ステーキでのコースの締めにもチョイスできる「トロふりかけ丼」だ(単品1800円)。その正体は、生ハム加工した牛肉を冷凍した加工ミンチ肉と神奈川産の寿雀卵の黄身とタレ、刻み海苔を、硬めに炊いたご飯に載せた初めて目にする丼ご飯。全体をしっかりと混ぜていくうちに肉が溶けたら食べ頃だ。お好みでわさびを加えて一口ほおばると、肉に負けない卵の旨味と噛みごたえのあるご飯が三位一体となり脳天を直撃する。この丼に魅了されたある40代男性客が一時期、この丼を食べたいがために毎週のように様々な同行者を連れてこの店に通いつめたというエピソードも納得の味である。
この店には、焼肉屋の肩肘はらないカジュアルさと、鉄板焼きのリッチな重厚感を併せ持つ、まさにこの店の特徴に通じる魅力をもった50代、60代の先輩たちが集まり、それぞれのスタイルで肉と酒を愛でている。40代の男性客はこの店ではまだまだ若手。粋な大人のふるまいを学ぶには格好の場所である。そして、女性が肉を所望した際の切り札としては最強の部類に入るカードだろう。

Text by Kazumi Kera